本年度は光重合型リライン材に対する C. albicans付着の評価についての研究を行った.不適合になった義歯にはリライン(義歯内面の合わせなおし)が必要になる.従来のリライン材の多くは化学重合型であり,操作時間が限られていた.一方で新規に開発された光重合型のリライン材は光照射をするまで弾性を維持することができ,操作時間が長いことが特徴である.また,重合直後のリライン材は完全に重合が完了していないことにより,表面性状が安定せず,微生物付着に影響を及ぼす可能性もある.そこで本年度は光重合型および化学重合型リライン材の表面性状を調査し,C. albicans付着の影響を検討した. 使用した材料は,化学重合型および光重合型リライン材,コントロールとして加熱重合型義歯用ポリメチルメタクリレート(PMMA)の3種類を用いた.試料は重合直後および24時間後の試料を用いた.表面性状は,表面粗さとビッカース硬度を測定した.微生物付着試験 は,C. albicansの菌液を各試料に1.0mlずつ接種後24時間培養し,試料に付着した生菌のATP量測定を行った.また,付着した細胞を蛍光染色後に蛍光顕微鏡で視覚的に菌の様子を観察した. 各リライン材の表面粗さには有意差を認めず,硬さは化学重合型よりも光重合型が有意に高かったがPMMAよりは低い値を示した.光重合型に付着した生菌数は重合直後,24時間後ともに化学重合型,PMMAよりも有意に少なかった.また,蛍光顕微鏡による観察では,化学重合型の重合直後において酵母型菌体の凝集が確認された.光重合型では酵母型菌体は認めるものの凝集は認められず,付着量もわずかであった. 研究期間全体を通じて義歯床用材料に付着する微生物を抑制することで新たな義歯清掃方法の開発を行うことを目指し,研究を行った.
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