研究課題
2型糖尿病は代表的な生活習慣病であり,歯科治療においても易感染性や合併症から惹き起こされる骨代謝異常が懸念されている.近年,糖尿病罹患率の増大は国内でも問題となっているが,糖尿病罹患者に対する部分床義歯による補綴治療に対して,歯周組織への影響や長期予後を考慮した治療の指針というのはまだ確立されてない.本研究は,部分床義歯装着後の歯周組織の経時的変化を多角的に評価することで,長期的予後を含めた治療指針を導き出すことを目的とした.2型糖尿病患者の支台歯の長期的経過を多角的に評価したところ,生存率に関しては2型糖尿病の患者群の支台歯は健常群と変わらず良好な結果を示した.一方で,歯槽骨評価では,歯周安定期治療中でも2型糖尿病患者の部分床義歯の義歯床下歯槽骨の頂部に骨密度および骨レベルの減少が確認された.骨動態に関してさらなる基礎研究が必要であるものの,2型糖尿病患者でも適切な管理のもとであれば長期的な支台歯の維持が可能であるという示唆を導いた.本課題で得られた知見は,2型糖尿病患者の補綴治療の方針立案時のエビデンスを提供するものであり,治療方法を正しく選択するにあたり重要な情報となりうると考えられる.また,後ろ向き研究で採得したデータの中から,義歯装着後5年後のデータを予後因子として多変量解析を行い,部分床義歯支台歯の長期的生存に関する予測因子の解析を行った.その結果,以前の研究から指摘されてきた失活歯であることに加えて,5年経過時の歯冠歯根比の増大,支台歯の欠損側骨密度の減少は,支台歯の喪失と有意な関連が認められた.このことから定期受診時に撮影されたエックス線写真からわかるこれらの評価項目は,支台歯の長期生存の予測や,定期受診後の治療方針の一助として役立つことが示唆された.
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Journal of Prosthodontic Research
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10.2186/jpr.JPR_D_22_00034