研究課題
高齢社会において、無歯顎補綴は従来の全部床義歯のみならず、インプラントを併用して機能面を向上させることが可能なインプラントオーバーデンチャーという治療法も確立されてきた。しかしながら、歯科用インプラントは費用が高額であることや外科的侵襲を伴うといった欠点もある。治療方法選択の際、このような治療の利点欠点は患者の意思決定を困難とさせている。マーケティング分野において広く使われているコンジョイント分析が、近年、医療分野にも応用されつつあり、患者の選好や意思決定に関する研究の幅を広げている。本研究ではこのコンジョイント分析を応用し、無歯顎患者が補綴治療を選択する際に、治療費、咀嚼しやすさ、快適性、清掃性、審美性、といったパラメーター(属性)をどの程度重視しているかを検証する。コンジョイント分析に際し、まず無歯顎補綴治療の患者満足度に影響するであろう因子を属性として抽出し、各属性について水準を設定する必要がある。それをもとに設問(アンケート)を作成し、被験者の回答からコンジョイント分析を行って、各属性が患者選好にどの程度影響を与えているか解析を行う。本研究では被験者約60名に対し、コンジョイント分析に基づくアンケートを行う予定である。2019年度はアンケート作成のためのパラメーター(属性)およびその水準の抽出を行うため、全部床義歯やインプラントオーバーデンチャーに関する過去の文献のレビューを行った。費用属性以外の属性とその水準の設定は終了している。費用属性に関する水準の決定は文献レビューでは困難なため、専門歯科医師によるデルファイ法を用いて、統一見解を得る予定であるが、現時点ではデルファイ法の準備段階である。
3: やや遅れている
コンジョイント分析は属性の抽出と水準の設定や設問内容によって、結果が大きく左右される分析であるため、これらの過程は慎重に行っていく必要がある。そのため2019年度はコンジョイント分析に関する文献や全部床義歯やインプラントオーバーデンチャーに関する論文の文献レビューを中心に行い、義歯安定性、咀嚼しやすさ、清掃性、審美性、疼痛、治療回数と期間を属性として抽出し、各属性の水準を決定した。しかしながら文献レビューだめでは決定することが難しい費用属性の水準の決定が遅れている。今後は早急にデルファイ法を実施し、費用水準の決定を行い、アンケートを作成していく必要がある。
引き続きデルファイ法による費用属性の水準設定を行い、アンケートの内容を決定する。それと当時に本学歯学部倫理審査委員会における承認を得るための書類準備および、承認完了までを行う。その後に、本研究参加のリクルートを行う予定であるが、過去の当分野の研究参加患者で定期的にメインテナンス等で本学歯学部附属病院に通院している患者に対して、リクルートを行うため、リクルートに時間を要さず、アンケート実施しが遂行できる。2020年度中にはアンケートが実施できるよう進めていく予定である。
コンジョイント分析のアンケート実施のためのノートパソコンを未購入出ること、参加を予定していた学会等に参加できなかったこと、およびデルファイ法の実施が遅れており、謝金支払いが発生していないことにより次年度使用額が生じた原因である。ノートパソコンの購入はアンケート内容とアンケートの実施方法が決定したのちに適した仕様の物を購入する予定である。また、2020年度は資料収集および経過報告のため積極的に学会へ参加して、知見を聴取すると同時にデルファイ法を早急に実施したいと考えている。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
The International journal of oral & maxillofacial implants
巻: 34(6) ページ: 1434-1440
10.11607/jomi.7565