研究課題/領域番号 |
19K19090
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒崎 陽子 岡山大学, 大学病院, 助教 (90759664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インプラント周囲炎 / 歯槽骨密度 / 歯槽骨吸収 |
研究実績の概要 |
本研究では、インプラント周囲炎を診断するための検査として、デンタルエックス線画像から歯槽骨密度(al-BMD)を定量的に評価できる市販ソフトウェア(BoneRight、デンタルグラフィック・コム社)を用いたインプラント体周囲al-BMD評価法を確立し、その信頼性および検査精度の検証を行なう。 まず、被曝による不利益の考慮が必要ない献体でインプラント体埋入部位を想定した欠損部のal-BMD測定法の信頼性を評価した。生前に臨床研究への協力に同意を得た献体22名(死亡時平均年齢84.1歳、男/女:17/5名)のデンタルエックス線撮影を行った。al-BMDの測定領域は、インプラント体周囲の骨吸収が歯槽骨上縁から生じることを考慮し、歯槽骨頂直下から3領域を設定した。50枚(上顎/下顎:26/24枚、前歯部/臼歯部:18/32枚)のデンタルエックス線画像から、事前にキャリブレーションした検者2名が独立してal-BMDを2回測定した結果、検者内一致度はICC:0.956、検者間一致度はICC:0.955と良好だった。さらに、デンタルエックス線撮影部位と同部位を市販ソフトウェア(OsiriX、NEWTON GRAPHICS社)で測定した歯槽骨密度とBoneRightで測定したal-BMDとの相関関係を評価し、妥当性の検討を行った。25枚(上顎/下顎:8/17枚、前歯部/臼歯部:6/19枚)のデンタルエックス線画像を用いて検討した結果、al-BMDと歯槽骨密度との相関係数は0.697(p<0.01)で、有意な正の相関を認めた。 今後は倫理委員会承認後に、岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科でメインテナンスを受けているインプラント患者のインプラント周囲炎罹患インプラント体と健全インプラント体のデンタルエックス線画像を用いて、インプラント周囲al-BMD測定プロトコールの検証を開始予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
献体を用いたインプラント体埋入部位を想定した欠損部のal-BMD測定法の信頼性、妥当性がすでに確認できており、さらには岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科にてメインテナンスを受けているインプラント患者を対象とした臨床研究の倫理委員会申請書の準備や対象患者の抽出等を実施しているため。
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今後の研究の推進方策 |
1.倫理委員会承認後に、インプラント周囲炎罹患インプラント体とインプラント体周囲の骨吸収を認めない健全インプラント体を有する患者のサンプリングを開始する。これらのインプラント患者は、すでに構築済みのインプラント患者データベースに登録された患者734名より抽出が可能である。 2.対象者の診療録調査およびインプラント部位のデンタルエックス線撮影を実施し、撮影したデンタルエックス線画像でインプラント体周囲al-BMDを測定する。インプラント体周囲al-BMD測定範囲は探索的に検証し、最適化する。検討した測定範囲ごとに、検者内一致度と検者間一致度を算出し、最も再現性の高い測定範囲をインプラント体周囲al-BMD評価法で用いる。そして、インプラント周囲炎罹患インプラント体群では健全インプラント体群よりも実際にal-BMDが低下しているかを確認し、インプラント周囲al-BMD評価法の検査精度を検証する。 3.さらに、インプラント体周囲からの排膿は認めるが骨吸収がまだ発生していないインプラント周囲粘膜炎罹患インプラント体を有する患者を対象に、インプラント周囲粘膜炎部のデンタルエックス線撮影および臨床診査を行いながら追跡調査を行う。そして、インプラント体周囲al-BMD評価法のインプラント周囲炎予測精度の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度にサンプリングを開始予定であるインプラント周囲粘膜炎患者を次年度も追跡し、定期的にデンタルエックス線撮影ならびに臨床診査を実施予定であるため、次年度使用額が生じた。診査キットの購入費用、デンタルエックス線撮影費用や得られた研究データをセキュリティーレベルが高く、データの信頼性保証体制が確立された専用システムで管理するための費用として経費を使用する予定である。
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