研究実績の概要 |
口腔インプラント(以下,インプラント)の代表的な材料として用いられるチタンは高い生体安定性を誇るが, 酸性環境下においてフッ素化合物(以下,フッ化 物)に暴露されると,チタン表面の不導体膜が破壊・腐食されることは広く知られている。本研究では,インプラント周囲炎と歯周炎に罹患した天然歯とが同一口腔内において混在している状態を想定して実験を行う。チタン製アバットメントやインプラント体から溶出したチタンイオンが,インプラント周囲炎に罹患した組織から検出される細菌が産出する内毒素 (以下,LPS)と連動して,インプラント周囲組織,特に骨組織にどの様な影響を与えるかを解析することを目的とする。 最終年度は,前年度の研究結果を受けて,実際に溶出させたチタンイオンと種々のLPSが,天然歯の歯周炎病態にどのような影響を与えるのかを生物分子学的手法を用いてin vivo 的解析を行った。 また,同時にチタンイオンを溶出しにくいインプラントメインテナンス方法についても考察を行った。インプラント治療が施された患者に対する明確なメインテナンス方法は確立されておらず,天然歯用に開発された器材を転用しているのが現状である。天然歯のメインテナンスに用いられる非接触型器具を, インプラントが存在する口腔内におけるデ・プラーキングに応用した場合に,補綴装置やアバットメント表面に与える影響について解析した。得られたデータをもとに,高齢インプラント患者のメインテナンス方法や市販されている種々の歯磨剤を用いたインプラントメインテナンス方法について論文を投稿し,公開されるに至った。
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