研究課題/領域番号 |
19K19101
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
斉藤 小夏 明海大学, 歯学部, 助教 (00824533)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ブラキシズム / 携帯型咀嚼筋筋電図 / バイオフィードバック訓練 / グラインディング |
研究実績の概要 |
クレンチング自覚者に咀嚼筋筋電図バイオフィードバック訓練(EMG-BF訓練)による日中および夜間のクレンチング抑制効果について実験したSatoらの報告は,睡眠時ブラキシズム(SB)のうちtonic成分であるクレンチングを対象としたものであり,夜間のグラインディングに対する検討はなされていない.EMG-BF訓練によるグラインディングへの影響は未だ不明である.携帯型EMG-BF装置は無拘束かつ長時間のEMG記録が可能である.また日中にEMG-BF訓練を行い,夜間はEMG測定のみでEMG-BF訓練を行わないため夜間の睡眠の妨げにならないよう配慮することができる.グラインディングは睡眠中の歯ぎしりとされており,睡眠時のEEGとの関連があるのではないかと考えられる.グラインディング抑制効果とEEGの関連については未だ不明である. 被験者を(バイオフィードバック)BF群と,コントロール(CO)群にランダムに振り分ける.初夜効果を排除したのち3週間の実験を行う.同日の日中と夜間睡眠時を測定対象とする.日中の測定は昼食をはさむ5時間とし,夜間睡眠時の測定は睡眠時間帯から5時間を抽出し解析を行う.入眠時間はポリソムノグラフ記録(polysomnography:PSG)で確認する.BF群の1週目の測定では,BF信号発生の閾値を決定するためにベースラインデータを記録する.閾値は筋活動量(%MVC)と持続時間の組み合わせにより決定し,食事,会話時の機能的な筋活動に対してはBF信号は発生しないよう設定する.2週目にEMG-BF訓練を2日間連続で行い,3週目では再度日中・夜間ともにEMG測定を1日行う.EMG-BF訓練のBF信号は本体から電子音が発生し,行動を認識させる聴覚バイオフィードバックを行う.CO群はいずれの測定にもBF信号を発生させず,BF群と同様のスケジュールでEMG測定のみ実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
咀嚼筋筋電図バイオフィードバック訓練(EMG-BF訓練)に使用する携帯型EMG-BF装置の台数確保が整った.EMG測定およびEMG-BF訓練は連続3週間の実験を行い,同日の日中と夜間睡眠時を測定対象としている.装置は上書き保存でデータを保存するため,データの記録・保存・解析を行うためには複数台必要となる. 被験者の選定については,100枚以上の問診表を配布した.問診票はアメリカ睡眠医学会の睡眠国際分類を基に被験者問診票を作成した.回答結果のうち,適格基準1として①睡眠中の歯ぎしりの自覚,または,指摘を受けたことがある.②昼間,上下の歯を合わせてしまう自覚がある.この2つの条件を満たす者を選択する.その後,口腔内所見を確認し,適格基準2と照合する.適格基準2として①頬圧痕もしくは舌圧痕を認める.②咬筋肥大を認める.③骨隆起がある.④咀嚼筋の圧痛を認める.⑤下顎前歯部切縁に,咬耗による象牙質の露出が線状を超えた範囲で認められる.以上の項目に一つでも該当することとする.除外基準は以下に示す項目に一つでも該当する場合とする.①可撤性義歯を装着している.②臼歯部の咬合支持域がない.③実験開始日からさかのぼり,過去1か月以内に抗炎症薬あるいは筋弛緩薬を服用した.④ 重度の歯周疾患に罹患している.これらの条件を満たし,実験の概要説明を行った後,同意の得られた 者を被験者として選択した. その後,被験者をバイオフィードバック(BF)群と,コントロール(CO)群にランダムに振り分ける.初夜効果を排除したのち3週間の実験を行っている.被験者のスケジュールを3週間分確保するため,被験者選定後実験がスタートするまでには日数を要することがあるが,実験が終了したものからデータの解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
バイオフィードバック訓練(EMG-BF訓練)に使用する携帯型EMG-BF装置の確保により実験環境が向上した.また,被験者数も増加していることから,今後は国内外の学会発表および学会誌への投稿を視野に研究を進めていく.現在,ブラキシズム抑制に用いられる認知行動療法の多くは,睡眠中に微弱な電流を電極から流すという手法をとっている.2018年に報告されたEMGバイオフィードバックによるSB 抑制のシステマティックレビュー(Jokubauskas L;J Oral Rehabil.2018)でも,睡眠の妨げに対する懸念が述べられている.一方,本研究で使用している携帯型EMG-BF装置は,日中を対象として聴覚フィードバックによる手法を用いており侵襲が少ない.また,本体が小型かつ軽量であり,電極の貼付位置からも外観に触れにくい設計のため,日常生活環境下でのEMG-BF訓練が可能であることからも差別化ができる.したがって,国内外の学会や学会誌において注目を浴びることが予想できる. これまで収集した個々のデータの解析は順次終了している.そこで,今後は全データの解析を行い,研究報告が行えるようまとめていく.それに伴い,各学会への参加や海外雑誌への投稿を目的とした校正等が必要になってくると考えられる.
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