研究実績の概要 |
顎関節症の発症には,多種多様な因子が関与している事が報告されており,治療方法も多岐にわたっている.その中でもブラキシズムは発症のみならず,持続因子としても大きく関与していると考えられているものの,日中のクレンチングに対して生活環境下における筋電図測定を行った研究は少ない.その理由として,従来の研究で使用されているEMG測定装置は大型であり,被験者の日常生活に支障を来し,日中の測定に向いていないことがあげられる.また,EMG波形の解析の際に,食事や会話などの機能運動と,クレンチング等の非機能運動を筋電図学的に識別しなければならない.これらの問題点を解決するために,携帯型筋電計バイオフィードバック装置(EMG-BF装置)の開発,ならびに筋電図学的なイベントの識別方法について検討がなされてきた.そこで,本研究では,EMG-BF装置の臨床応用の可能性をさらに発展させるために,日中のクレンチングに対するEMG-BF訓練が, 咀嚼筋痛に及ぼす効果について検証した. 日中のブラキシズムを自覚し,夜間のブラキシズムを指摘されたことのある被験者に対し,同意を得られた被験者18名(24.5±3.1歳)をバイオフィードバック群とコントロール群にそれぞれランダムに振り分け,連続した3週間の日中および夜間睡眠時のEMG測定を行った. 実験前後の問診票から,顎周囲に「痛み」または「だるさ」を訴えた被験者4名中3名が改善を認めた.以上の結果より,日中のクレンチングに対するEMG-BF訓練が夜間のブラキシズムを抑制し,咀嚼筋痛を改善しうる可能性が示唆された.
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