研究実績の概要 |
顎関節症の発症には,多種多様な因子が関与している事が報告されており,治療方法も多岐にわたっている.その中でもブラキシズムは発症のみならず,持続因子としても大きく関与していると考えられているものの,日中のクレンチングに対して生活環境下における筋電図測定を行った研究は少ない.その理由として,従来の研究で使用されているEMG測定装置は大型であり,被験者の日常生活に支障を来し,日中の測定に向いていないことがあげられる.また,EMG波形の解析の際に,食事や会話などの機能運動と,クレンチング等の非機能運動を筋電図学的に識別しなければならない.これらの問題点を解決するために,携帯型筋電計バイオフィードバック装置(EMG-BF装置)の開発,ならびに筋電図学的なイベントの識別方法について検討がなされてきた.しかし,覚醒時ブラキシズムは診断,治療効果の評価など多くの面で未だコンセンサスを得られるには至っていない.そこで,筋電図記録を利用して筋活動量と筋活動持続時間を組合せたパラメータを評価し,覚醒時ブラキシズムに対する筋電図の特徴を検討した.感度と特異度を算出し,受信者動作特性(ROC: receiver operating characteristic)曲線を求めた.最大咬みしめ時の筋活動量(MVC: maximum voluntary contraction)を100 %とし,相対値で筋活動量を評価した.臨床所見をもとにブラキシズム群とコントロール群に大別し,比較するROC曲線およびカットオフ値を求めた.その結果,20%MVC持続時間 1s以上のイベントでROC曲線下面積 0.68,カットオフ値3.1回/h(感度0.52,特異度0.75,オッズ比3.19)であった.覚醒時ブラキシズムの評価に対し筋電図記録が有効であることが示唆された.
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