研究実績の概要 |
これまでは,咀嚼時舌運動の観察には計測後の解析作業において,外部ストレージに得られた超音波画像を保存し,トリミングおよび連結などの画像処理を行い,その後手動操作で画像上の距離を実測していく解析法が煩雑であり,臨床応用上は実現性に乏しい手段であった.さらに,本年度は新型コロナウイルスのパンデミックもあり,飲食を伴う本研究課題の被験者への実施が困難な状況でもあった.そこで,本年度は超音波診断装置を用いて食品摂取時の舌運動をより簡易に観察,評価する方法の改良を行った. 具体的にはストレージした画像に対し,二値化処理を画像処理ソフトを用いて行うことで,手動で行っていた画像解析処理の簡易化に成功した.被験食品には2 g, 4 g, 6 gにトリミングした咀嚼開始食品(プロセスリード,抹茶風味,大塚製薬工場)を用いた.被験運動は座位において,押しつぶしまたは左右側いずれかの片側の指示咀嚼と自由嚥下を指示した.被験食品2 g, 4 g, 6 g の摂取時のMモードの舌背部,オトガイ舌筋およびオトガイ舌骨筋の筋膜近接部位(以下,近接部位)の運動軌跡を肉眼的に観察した.また,舌運動の指標として摂取開始から嚥下直前までの任意の4秒間における画像の高エコー領域のピクセル値を領域抽出ソフトウエア“Flower Shape Analysis System”(http://www.kazusa.or.jp/picasos/)を用いて求め,1秒間あたりの平均値を比較検討した.舌背部と近接部位の軌跡の肉眼的観察の結果,いずれも押しつぶしでは平坦な軌跡を示し,指示咀嚼では波状を示すことから,明らかに異なる運動軌跡となった.また,画像解析の結果,高エコー領域のピクセル値は指示咀嚼時に大きいことが明らかとなった.
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