研究課題/領域番号 |
19K19113
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
堤 貴司 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (70736652)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯学 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病は、主に高齢者にみられる疾患で、認知機能の低下を主徴とする疾患で、bアミロイドの脳内への蓄積が代表的な原因である。これまでは bアミロイドは脳組織に限局して発現するとされてきたが、最近の研究により脳以外の末梢組織においても発現することが分かってきている。また、高齢者の咬合不正は一定数存在すると想定されるが、全身への見かけ上の重篤度の低さから適切な治療がされず放置されているケースが多く存在する。我々はマウスを用いた先行研究を行い、咬合不正によって認知機能が低下することを示唆する結果を得ている。そこで、本研究では、咬合不正モデルマウスを用いた基礎研究を行って、咬合不正と認知機能低下との相関関係を確実にし、咬合不正周辺の歯周組織がアルツハイマー病原因物質の発生源であるか解明することを目的とする。 R1年度は、「咬合不正と認知機能との関係性の評価」と設定した研究課題を実施した。In vivo咬合不正モデルを用いてY字迷路試験、新奇物質探索試験、8方向性放射状迷路試験を行い、過剰な咬合圧を受けたマウスの認知機能などの活動性を評価した。また、「咬合不正によるBアミロイド発現領域の同定」と設定した研究課題の一部を実施した。歯周組織および脳組織を免疫染色,PCR, western blottingにて解析し,アルツハイマー病原因物質であるアミロイドBの発現の局在および発現量を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した研究課題「咬合不正と認知機能との関係性の評価」で、過剰な咬合圧を受けた8週齢 (若年者相当)マウスでは一過性に認知機能の低下が起こることを示唆する結果を得た。その一方で、50週齢(老年相当)マウスでは実験開始前から既に認知機能は8週齢と比べて有意に低下しており、過剰な咬合圧に起因したさらなる低下は認めなかった。また、研究課題「咬合不正によるBアミロイド発現領域の同定」では、アルツハイマー病原因物質アミロイドbの発現の局在を解析した。その結果、過剰な咬合圧を受けた歯周組織では発現を認めなかったが、脳海馬における発現の局在を確認した。また、PCR,western blottingにて脳海馬における過剰な咬合圧に起因したアミロイドbの有意な発現の増加を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
R1年度に実施予定であったアミロイドbの血中濃度の測定は、実験計画の進行状況と基本的手技の困難さから実行できなかったため、R2年度では実施していきたい。また、研究課題「アルツハイマー病態マウスとの比較検討」も開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの行動解析に必要な備品は既に導入済みだったため消耗品以外の購入はあまりなかったことと、学会発表のタイミングが合わず発表は来年度に行うこととしたため、残額は次年度に持ち越すこととした。
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