使用する細胞の効率的な浮遊培養法の確立を行った。接着培養と比較して,浮遊培養では一度に大量の細胞を培養でき,遺伝子導入の際の試薬の量を節減し,費用や時間を節約することが可能となる。遺伝子導入を行う際のコストも浮遊培養のほうが圧倒的に安価となり,その意義は大きい。まずタイテック社製の振盪培養器を用いて,温度,振動数,二酸化炭素濃度等の条件を検討した。その結果,37度・120rpm・8%二酸化炭素濃度で使用する細胞が最も増殖することが明らかとなった。 次に使用するベクターの構築を行った。エントリーベクターをNBRC(NITE)より購入し,LRクローニングによりデスティネーションベクターに導入した。デスティネーションベクターの選考基準として発現効率・タグの付与・非ウイルス性等を考慮した。結果NativePure pcDNA Gateway Vectorが目的に適しており,これを選択した。このベクターはそれぞれC末端およびN末端にV5タグが付与されているものがあり,V5タグの位置やエントリーベクターの組み合わせによりタグを付与しないベクターを作製できることもメリットである。 浮遊培養環境下で作製したベクターを導入し,目的のタンパク質が発現していることが確認された。今後タンパク質の構造解析等を行う予定であったが,申請者の異動に伴い1年目で研究が廃止となった。今後,資格が回復した際には改めて申請行い継続していく所存である。
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