高齢期におけるいきがいや楽しみとして、食事や他者とのコミュニケーションは常に上位にある。しかし、口腔健康と幸福感との関連について、超高齢者を対象とした研究はない。そこで本研究では、超高齢者の口腔健康と幸福感との関連について検討した。 対象者は、2012年度、2015年度、2018年度にSONIC研究に参加した89-91歳の自立した地域在住高齢者717名(男性:355名、女性:362名)とした。口腔健康の指標として残存歯数を用い、2群(20本以上群、20本未満群)に分類した。幸福感の指標として、人生満足尺度(SWLS;Satisfaction With Life Scale)を用いた。統計的解析には、幸福感を目的変数、残存歯数を説明変数とし、性別、地域、調査年度、教育年数、経済状況、喫煙・飲酒習慣、既往歴(がん、脳卒中)、外出頻度、他者との交流頻度、認知機能、握力、性格傾向を調整変数とした重回帰分析を用いた。有意水準は5%とした。 20本以上歯を有する者は165名(23.0%)であった。幸福感を目的変数とした重回帰分析の結果、残存歯数は幸福感に有意な関連を認めた(参照:20未満群、20本以上群:B=1.66、p=0.001)。また、性別(参照:男性、女性:B=1.93、p=0.003)、調査年度(参照:2012年、2018年:B=-1.06、p=0.049)、経済状況(参照:ゆとりなし、ふつう:B=2.14、p<0.001、ゆとりあり:p=2.74、p<0.001)、認知機能(B=-0.18、p=0.001)、性格傾向(神経症傾向:B=-0.30、p<0.001、誠実性:B=0.33、p<0.001)が幸福感に有意な関連を認めた。 本研究の結果より、超高齢者において、20本以上歯を有する者は、20本未満の者に比較して、様々な因子を調整したうえでも、幸福感が高いことが示された。
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