研究課題
1)データの収集:すでに平成20~26年に国立循環器病研究センター予防健診部において歯科検診を受診した吹田研究基本健診参加者の中で初回歯科検診から4年以上経過し、文書により同意を得た者に対して研究期間中に再評価を行った。また、同時に初回歯科検診も行い、ベースライン時の調査者数の増加を図った。しかしながら、国立循環器病研究センターの移転及びに新型コロナウイルスの影響にて、検診が可能な期間が短く、平成30年度内に歯科検診再評価は3名であった。2)咀嚼能率低下とメタボリックシンドローム罹患との関係:ベースライン時ならびに再評価時いずれにも参加した937名の医科歯科データを用いた。調査項目に欠落のあった138名、およびベースライン時にメタボリックシンドロームあると診断された200名を除外した599名のうち、ベースライン時の咀嚼能率の値より、咀嚼能率低下群、非低下群に分類した。ベースライン時の咀嚼能率低下の有無とメタボリックシンドローム罹患との関連についてCox比例ハザードモデルを用いて男女別に解析を行った。男性においては咀嚼能率低下群におけるメタボリックシンドローム罹患危険度は、年齢、歯周状態、喫煙習慣、飲酒習慣の調整を行った上でも2.13(95%信頼区間:1.05-4.30)であった。一方で女性においては、有意な関連は認められなかった。本研究の結果は、咀嚼能率が低い場合、摂取可能食品の選択肢が狭まることで栄養バランスに悪影響を及ぼすという仮説を支持するものである。
3: やや遅れている
国立循環器病センター移転及びに新型コロナウイルスの影響で、歯科検診が行えない期間が発生しており、データの収集という点においては予定より遅れている。しかしながら、その一方で、解析作業、論文投稿を行っていることより、研究全体の進捗状況としては、やや遅れてはいるものの、おおむね順調に進んでいる。
新型コロナウイルスの収束により、歯科検診が可能となれば、データ収集を再開する。6月より再開できた場合、歯科検診再評価者は125名を目標とし、累積して1,130名を目標とする。初回歯科検診は12名を目標とする。解析については、前年度に引き続き、サンプル数を追加して横断解析を行う。また、ベースライン評価からの追跡期間は最長でも4年と短く、サンプル数も十分ではないが、前向きコホート研究のプレ解析として、これまでの横断解析で頸動脈硬化との関連が認められている口腔健康因子(歯周病、咀嚼能力関連因子)のベースラインデータならびに追跡期間中の変化が、再評価時における動脈硬化性疾患リスク因子ならびに発症に及ぼす影響について、縦断解析(年齢、性別、既往歴、生活習慣等を調整した多変量解析)を行い、今後の前向きコホート研究の基礎資料を得ることを目標とする。
国立循環器病研究センターの移転、及びに、新型コロナウイルスの影響にて、歯科検診が予定通り行えなかったこと、また、学会の延期等により、使用予定額の差異が生じた。次年度も同様に差額が生じる可能性があるが、唾液検体の解析には元々予算は不足しており、使用予定金額を増加させることで、総合的な研究計画の進行を図る。
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Journal of Prosthodontic Research
巻: 3 ページ: 346-353
10.1016/j.jpor.2019.10.001
Odontology
巻: ‐ ページ: -
10.1007/s10266-020-00501-3