研究課題/領域番号 |
19K19123
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
來田 百代 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10733082)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 咀嚼能率 / 循環器・高血圧 |
研究実績の概要 |
1)データの収集:すでに国立循環器病研究センター予防健診部において歯科検診を受診した吹田研究基本健診参加者の中で初回歯科検診から4年以上経過し、同意を得た者に対して研究期間中に再評価を行った。初回歯科検診も行い、ベースライン時の調査者数の増加を図ったが、新型コロナウイルスの影響にて、データの収集は行うことが出来なかった。 2)咀嚼機能とメタボリックシンドローム(Metabolic syndrome: 以下MetS)との関連:MetS罹患のない599名を対象とし、追跡調査を行った。対象者のベースライン時の咀嚼能率を測定し、咀嚼能率低値群、非低値群に分類した。ベースライン時の咀嚼能率非低値群を基準とし、低値群における、フォローアップ時のMetS罹患および各構成因子に対するリスクをCox比例ハザードモデルで算出した。解析の結果、男性において、咀嚼能率とMetS罹患との間に有意な関連が認められた。各構成因子について、男性は咀嚼能率と血圧高値、高中性脂肪血症、血糖高値との間に有意な関連が認められた。これより、咀嚼能率が低い場合、MetS罹患のリスクとなることが示された。 3)歯周状態の悪化は咀嚼能率低下のリスクとなる:ベースライン時ならびにフォローアップ時の両方の歯科検診に参加した1201名のうち、調査期間中における機能歯数に増減のなかった663名を解析対象とした。歯周状態の変化により、対象者を歯周状態改善群(あり→なし)、不変群(歯周病なし→なし、あり→あり)、悪化群(なし→あり)の3群に分類し、各群における調査期間中の咀嚼能率の変化率を算出した。歯周状態改善群、不変群、悪化群における咀嚼能率変化率の中央値はそれぞれ-11.7%、-19.2%、-30.8%であり、各群間に有意差を認めた。これより、歯周状態の悪化が咀嚼能率低下のリスクとなることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行により、歯科検診が行えず、データの収集という点においては予定より遅れている。しかしながら、その一方で、解析作業、論文投稿を行っている事より、研究全体の進捗状況としては、やや遅れているものの、おおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの収束により、歯科検診が可能となれば、データ収集を再開する。年度途中より再開できた場合、歯科検診再評価者は125名を目標とし、累積して1,130名を目標とする。初回歯科検診は12名を目標とする。解析については、前年度に引き続き、サンプル数を追加して横断解析を行う。また、ベースライン評価からの追跡期間は最長でも4年と短く、サンプル数も十分ではないが、前向きコホート研究のプレ解析として、これまでの横断解析で頸動脈硬化との関連が認められている口腔健康因子(歯周病、咀嚼能力関連因子)のベースラインデータならびに追跡期間中の変化が、再評価時における動脈硬化性疾患リスク因子ならびに発症に及ぼす影響について、縦断解析(年齢、性別、既往歴、生活習慣等を調整した多変量解析)を行い、今後の前向きコホート研究の基礎資料を得ることを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響にて、データの収集、及びに学会の参加が出来ず、また、産休による凍結期間が生じたため、予算の執行が計画通りに進まなかった。次年度に、可能であればデータの収集、学会の参加を行う予定であるが、このまま新型コロナウイルスの影響にて引き続き難しい場合は、既存のデータでの解析、論文作成により予算を投じる予定である。
|