研究課題/領域番号 |
19K19124
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
皆木 祥伴 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (30755351)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 摂食嚥下リハビリテーション / 舌機能 / 顎口腔機能 / 食品工学 |
研究実績の概要 |
本研究は,咀嚼障害もしくは機能低下を認める高齢者が行う舌押しつぶし(スクイージング)という代償的な咀嚼の機能評価法の確立と評価結果に対応する食品物性の提案を目的としている. 令和1年度では,健常若年有歯顎者15名,健常高齢有歯顎者10名に対して異なる機械的特性を有するゼリーを口腔内でスクイージングさせ,破砕が可能な最大の硬さを計測した.また,被験者個々の舌機能(最大舌圧)を計測し,両者の関係を分析した.その結果,最大舌圧が高い被験者ほど破砕できるゼリーの最大の硬さは大きくなる傾向にあることが明らかとなった.この結果より,咀嚼障害や咀嚼機能低下を認める高齢者に対して,スクイージングを想定した食品を提供する際に,最大舌圧は有用な情報であることが示唆された.本研究結果に関しては,平成31年4月に日本顎口腔機能学会大62回学術大会において口頭発表を行い,最優秀口演賞を受賞した. また,ゼリーのスクイージング時の舌圧と舌骨上筋筋活動を健常若年有歯顎者群と健常高齢有歯顎者群で比較すると,舌圧に関しては両者の間に統計学的有意差を認めなかった.しかし,舌骨上筋群筋活動の最大振幅は有意な差を認めた.これらの結果から,同じ種類のゼリー試料をスクイージングする際,健常若年有歯顎者群と健常高齢有歯顎者群では,舌の口蓋への押しつけの動態には大きな違いはないが,健常高齢有歯顎者群の方がより舌骨上筋に負荷がかかっていることが明らかになった.本研究結果に関しては現在英語論文を1編作成中であり,令和2年度に投稿予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,2年間で健常若年有歯顎者50名,健常高齢有歯顎者50名,健常無歯顎者50名を目標としていた.初年度では実験体系の調整に時間が割かれた結果,健常若年有歯顎者15名,健常高齢有歯顎者10名を対象に計測を行うに留まった.しかし,実験体系が整っている次年度では,被験者増加が見込まれる.その点を踏まえると,現時点の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
研究に大きな遅れを認めないため,目標被験者数に達するように当初の計画を行う予定である.令和2年度ではデータの収集および得られた計測データからスクイージングで破砕可能なゼリーの破断荷重と,緊張時および弛緩時の舌の硬さ,最大舌圧との関係を明らかにし,簡易な計測によりスクイージングにて摂取可能な食品の限界を予測するアルゴリズムを確立する.また,各ゼリーのスクイージング時に得られた舌圧データと筋電図データを用いて,健常若年有歯顎者,健常高齢有歯顎者および健常無歯顎者のスクイージングの違いを明らかにする予定である. 研究で得られた知見は,同年度内に学会発表を行い,英語論文を作成して,科学雑誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延に伴い、予定していた学会発表が学会の中止により行えなくなってしまったため,次年度使用額が生じている。 仕様計画としては、学会発表は国内外ともに依然として参加、発表を行えるかどうかはわからない状況であるので、可能な限り国内外の科学雑誌への研究成果の報告を優先して行っていく。 研究計画としては、口腔内に残留するゼリーの破砕片を細かく分析していく予定にしている。破砕様式の分類を行うことにより、破砕に対する舌圧の発現および舌の硬さとの関係性を明らかにしていく予定である。
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