咀嚼して口から栄養を摂取することが,同じ栄養量の経管摂取などと比較して全身健康を高める可能性が報告されてきた。本研究では,咀嚼の際に用いる咀嚼筋組織で特異的に産生される因子に着目し,四肢の筋組織内で産生されるものと比較した。その結果,抗炎症作用,抗菌作用を持つWAP four-disulfide core domain 12と呼ばれる因子は,腕や脚の筋ではほとんど産生されないが,咀嚼の際に活動する咬筋では産生されていた。本結果は,全身健康に役立つ因子が咀嚼に使用される筋組織内で産生される,すなわち咀嚼して栄養摂取することが全身健康を向上させる機序を説明できる重要な知見につながりうる。
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