本研究の目的を,“CAD/CAM冠の良好な長期予後および適応拡大のために,①前方・側方 滑走運動時と,②咀嚼運動時の対合歯咬合面の運動経路の差から,干渉しやすい部位,運動 を明らかにし,科学的根拠のある咬合調整方法を確立すること ”と位置づけ,被験者20名の顎運動データを採取,解析を行うことで,上記目的を明らかにすることとした. 研究手法として,デジタル式顎運動測定器を用いて,左右側方・前方滑走運動,ガム咀嚼運動(習慣性咀嚼側,非習慣性咀嚼側,自由咀嚼)のデータを採取した.解析を2段階に分けることとし,第一段階:下顎大臼歯咬合面における滑走運動と咀嚼運動の立体的な経路の差および干渉の有無を明らかにする,第二段階:咬合面をさらに細分化(Aコンタクト領域,Bコンタクト領域,Cコンタクト領域),顎運動毎(習慣性咀嚼側片咀嚼,非習慣性片咀嚼,自由咀嚼)における作業側,非作業側のどの部分で最も干渉しやすいか,として研究を進めてきた. 第一段階の解析(被験者10名)は終了,滑走運動と咀嚼運動には差があり,滑走運動を基として咬合面を形成した場合,咀嚼運動時には干渉する部位が存在することを示すことができた.本内容については,“Journal of Oral Health and Biosciences”に論文掲載済みである.また,本研究で使用したCADシステムの測定精度についても,“Dental Materials Journal”に論文掲載済みである. 第二段階の解析(被験者14名)も終了,非習慣性咀嚼側が作業側となる場合のCコンタクト領域において最も干渉しやすいことが明らかとなった.また,習慣性咀嚼側を作業側とする場合でも,C領域での干渉が最大となることから,当該領域である舌側咬頭内斜面が破折や脱離に関与していることが示唆された.当該内容について,論文執筆および投稿予定である.
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