ブタ下顎骨から智歯歯胚を採取し歯胚上皮細胞(DEC)および歯胚間葉細胞(DMC)を単離し継代培養を行った。磁性ナノ粒子(MNP)にて修飾したDECおよびDMCに磁 力を負荷することで単一の細胞シート構造を作製できた。 次に作製したDMCシート上にMNPにて修飾したDECを播種し磁力を負荷することによりDMC層とDEC層から成る複合歯胚細胞シート(CCシート)を作製した。またCC シート内における歯胚細胞の特異的遺伝子に関して検討した。real-time RT-PCRの結果、CCシートにおいてエナメル上皮特異遺伝子であるAmelogenin、 Enamelin、Ameloblastin、および象牙質特異遺伝子であるRUNX 2、基底膜特異分子であるtype IV collagen α1鎖(COL4)のmRNA発現レベルは、対照群(別個の 培養皿にて作製されたDECシートとDMCシートの混和物)と比較し有意に高かった。 またCCシート内でのCOL4蛋白に関して免疫蛍光染色を行ったところ、COL4は CCシートのDEC層とDMC層の境界領域に顕著に発現していることが確認された。これらの結果はDEC層とDMC層が外部磁力によって物理的に密着したことで上皮-間 葉相互作用が促進したことを示唆している。 移植体の作製に関しても検討を行った。作製したCCシートを挟むようにCCシートDEC層側にDECを播種したφ5.0mm×1.5mmの円柱形のコラーゲンスポンジを、DMC 側にはDMCを播種した同形のコラーゲンスポンジを設置し4-0バイクリル糸を用いて縫合・固定し発生段階の歯胚の細胞環境を模倣した。 今後は移植体、移植方法、移植期間に関して更なる検討を行うことが必要であると考えられる。
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