幹細胞は優れた増殖能、分化能から医科/歯科領域における再生治療の切り札として研究が進められている。その中でも特に間葉系幹細胞は遺伝子操作を行わず自家細胞を用いるため高い安全性が保証されている。ただし臨床応用が現実のものとなった今、幹細胞による治療効果の不安定さが新たな問題となった(効果の大小/効果が皆無/症状を悪化)。本研究チームでは、幹細胞に対するアスピリン処理によって如何なる幹細胞にも再生治療に耐えうる能力を賦活させ、予知性の高い治療を目指した。今回は薬剤関連顎骨壊死に着目しその治療効果を評価するものであった。 つまり、幹細胞治療で見られる効果のバラツキ(治療効果の大小だけでなく病状の悪化も含む)を投与する幹細胞に対するアスピリンによる前処理で最小限に留めることを目的とした。①「異常化/正常化」幹細胞の選択採取、②アスピリン投与による細胞レベルの効果、③病態モデルラットに対する全身投与治癒効果の評価、加えて④投与細胞数をコントロールし効果の違い、⑤結果として生じる肺組織への副作用などを比較した。これによりアスピリン処理された幹細胞の有効性を示した。 治療の安定性については幹細胞治療を進めていく上でクリアーしなければならない問題であり、この研究によって得られる成果は歯科のみでなく幹細胞を用いたあらゆる再生・細胞治療の基盤になると期待する。
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