本研究は歯科材料に含まれる成分のうち生体に毒性をもつものが多く報告される中、歯周炎による病的な歯槽骨吸収に対してその原因となる破骨細胞の活性を抑制することで骨吸収を抑制する効果をもつものを抽出し新規材料の開発に貢献することを目的としている。そのうち義歯や暫間修復物の作製などに広く用いられているレジン系材料を中心に様々な歯科用材料の成分における破骨細胞およびその前駆細胞と分化にかかわるシグナル伝達系の解析を行っている。しかしながら、レジン系材料の主成分である既存の歯科用レジンモノマーによる破骨細胞への毒性評価は依然として過去に報告したHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート) の抑制効果以上に毒性を抑えかつ分化能抑制効果を期待できるモノマーは見つからなかった。その他可塑剤や芳香族(溶媒)、基材での実験においても同様の解析を行っているが現在までに歯槽骨吸収に対して有効と思われる破骨細胞の分化抑制効果が認められず、むしろ細胞毒性効果が強く発揮され薬理学的効果として有用なものは発見できていない。 新規材料開発への試みとしてHEMAを軸に分化抑制に影響している構造の解析や分化抑制機序についても解析を行う予定であったが、構造上の影響に関しては同定できず高分子材料が重合反応を示す際には発熱や脱水反応等に伴う酸化ストレスからか毒性を示すことのみ確認された。今後も材料の構造のみならず重合反応など作用後の化学変化に関しても検討をしていくこととする。
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