超高齢化社会を迎えた本邦では,高齢者の低下した口腔機能を改善することによるオーラルフレイルの防止とQOLの向上は歯科医師にとって急務である.近年では,義歯やインプラント等で咬合を回復することが認知症予防や健康寿命延伸に寄与する可能性が示唆されており,歯科医師の担う責任は大きい.本研究では,高齢者の無歯顎患者を対象に,従来の総義歯(Complete Denture: CD)・インプラントオーバーデンチャー(Implant over Denture: IOD)・固定性インプラント義歯(Implant Fixed Denture: IFD)による治療効果に関して,臨床的・患者立脚型アウトカムによる評価をデータベース化し比較する.現在の状態・期待できる効果を解り易く可視化する患者説明システムを使用し,高齢者により効果的に予知性の高い補綴歯科治療を提供することを目標に,健康寿命の延伸を目指す.口腔関連QOLアンケートにはOral Health Impact Profile 日本語版(OHIP-J)を用い,それらは口腔に関する日常の困り事についての49の質問からなり,過去1ヶ月における経験の頻度を5段階評価のいずれかを選択し解答する.口腔関連QOLアンケートの項目を大きく4つのサブスケールに分類しグラフ化し,可視化すると共に治療介入により良好な結果が得られた.咬合支持の確立が,オーラルフレイルを防ぎ,結果的にフレイル,認知症予防につながるかどうかは今後の課題である.
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