インプラント周囲炎部位においてペーパーポイントにてサンプルを採取し、メタゲノム解析法により網羅的解析を行った結果、歯周炎における初期定着細菌とされているstreptococciが検出された。そこで、streptococciをターゲットとして、付着抑制可能な表面改質を実施することにより、最終的にインプラント周囲炎を惹起する細菌で構成されるバイオフィルム形成の後期定着細菌群の表面付着抑制に繋がる可能性が高いと考えた。 まず、streptococciにおいて、材料間の付着の違いについて評価を行った。具体的には、チタン及びジルコニアディスク上におけるS.sanguinis、S.gordonii、S.oralis及びS.mutansの付着の評価を行った。チタン及びジルコニア群におけるRa及び接触角は,両群間で有意差が認められなかったものの、生菌数を評価したところ、S.sanguinis、S.gordonii、S.oralis共にチタン群と比較してジルコニア群において生菌数が有意に低いという結果を得た。しかしながらS.mutansは、両群間に有意差は認めなかった。 次に、Streptococciの付着を防止する臨床的に簡便な方法を検討することとした。S.mutansにおいて齲蝕を抑制することで広く知られるNaFに着目し、中性2%NaFがstreptococciの付着抑制にも有効であるかを検討した。チタン及びジルコニアディスク上に2%NaFを塗布した群では、NaFを塗布しない群と比較し、生菌数が少なかった。 以上より、インプラント周囲炎部位に関与していると考えられるstreptococciにおいて、チタンと比較してジルコニアの方が付着抑制効果があり、さらに、中性2%NaF塗布は付着抑制に有効である可能性が示唆された。
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