研究課題/領域番号 |
19K19142
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平場 晴斗 日本大学, 歯学部, 助教 (00800989)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 接着 / 機能性モノマー / 表面処理 / 歯学 / 貴金属 |
研究実績の概要 |
歯科用貴金属合金を用いたクラウンやブリッジなどを装着する際,有機硫黄化合物による表面処理が接着強さの向上に有効である。有機硫黄化合物は貴金属合金表面で構造が変化し、貴金属に直接吸着する。そして,レジンと共重合することで接着性の向上に寄与することが明らかとなっている。そこで本研究の目的である簡便かつ接着耐久性に優れた歯科用貴金属合金への臨床術式の確立のために、まずは歯科用貴金属合金を構成する純金属に着目した。 本邦で多用されている金銀パラジウム合金をはじめとした主な歯科用貴金属合金には,機械的性質の向上を目的として銅が含有されている。その銅の接着には,有機硫黄化合物が有効であると報告されている。一方で,加熱などの処理により貴金属表面を酸化させることで,酸性機能性モノマーが有効となることが報告されている。また,アルミナブラスト処理は,機械的維持力の向上や清掃効果をもたらすだけでなく,貴金属合金に含まれる銅を酸化させることにより,酸性機能性系モノマーの有効性に寄与することが近年の報告で示唆されている。しかしながら,酸化などの表面が変化した貴金属に対して,接着に有効な表面処理は同一ではない可能性が考えられる。 令和元年度(平成31年度)は銅を被着体として用いて,トリ-n-ブチルホウ素重合開始型アクリルレジンとの接着強さにおよぼす影響についての比較検討および表面性状の分析を行った。その結果,銅の酸化はリン酸エステル系モノマーを有効にする一方で,本来有効である有機硫黄化合物の効果に影響を与える可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯科臨床において使用されている金銀パラジウム合金や金合金には、機械的性質の向上を目的に銅が含有されている。最近の研究では貴金属合金に含有している銅がアルミナブラスト処理によって酸化しているとの報告がなされた。銅に対しても有機硫黄化合物が有効であることは報告されているが,酸化などによって表面性状が変化した際は不明な点が残されていた。そこで,令和元年度(平成31年度)は,銅を被着体として用いることで,酸化が機能性モノマーに及ぼす影響を比較検討した。その研究は予定通りに進行し,研究結果の解析,分析,さらには論文作成まで終了している。研究成果については,国際誌に投稿中である。また,令和2年度で使用する歯科用貴金属合金の試料の製作も概ね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究計画に従い,歯科用貴金属合金を構成する銅における一定の結果が得られたことから,歯科用貴金属合金を被着体とする研究に着手している。急激な貴金属合金の高騰の影響もあったが,研究遂行のために必要な試料製作も順調に進んでいる。 令和2年度では,令和元年度の研究により得られた新たな考察をより深める研究を行い,貴金属合金に対する有機硫黄化合物と複数の機能性モノマーを併用することによる影響を比較検討し,その接着機構の分析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初に予想していなかった急激な貴金属の高騰により,歯科用貴金属合金はパックでの販売であることから,予定していた数量が購入できなかったことで残金が生じた。 次年度への繰越金は,令和2年度と合わせることによって令和元年度に不足した分の購入に使用する予定である。
|