研究課題/領域番号 |
19K19143
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
西尾 健介 日本大学, 歯学部, 助教 (50780558)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電解酸性機能水 / 高齢者 / 肺炎 / 健康寿命 / 口腔ケア |
研究実績の概要 |
我が国では、健康寿命と平均寿命の乖離が問題となっている。健康寿命の短縮は社会保障費の増加に繋がるため、健康寿命の延伸は、我が国の喫緊の課題となっている。健康寿命を損ねる疾患に肺炎が挙げられる。肺炎の発症は、口腔衛生状態と密に関連している。特に高齢者の口腔内には複雑な補綴装置が装着されていることも多く、臨床や介護の現場では、十分に口腔ケアが行われていない場面に遭遇することも少なくない。高齢者の口腔ケアにおいて、ブラッシングによるケアが最優先であることに変わりはないが、十分にブラッシングができない高齢者も多く、効果的で簡便な口腔ケア方法の確立が期待されてる。そこで本研究では、様々な医療現場で使用されている電解酸性機能水(Acid-electrolyzed-functionalwater : 以下A-FW)の高スペクトルな殺菌効果、安全性に着目し、A-FWによる含嗽が口腔ケア方法として有効かを検討した。 本研究では、当院総義歯補綴科に通院中で、症状が安定している、有床義歯装着者を被験者とした。電解酸性機能水の含嗽を1週間指示し、その後、口腔内より試料を採取し以下の解析を行った。 1.唾液分泌量・唾液中のSecretory Immunoglobulin A (SIgA) の測定 2.舌・唾液中の細菌量の測定 3.舌・唾液中の細菌の肺炎関連菌の測定 電解酸性機能水の含嗽により、多くの被検者で舌苔および唾液中の細菌数が減少し、さらに粘膜免疫に関連する唾液中のSecretory Immunoglobulin Aの上昇が確認された。また肺炎関連菌の変化については、着目した黄色ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌の発現量に低下の傾向を認めた。2020-2021年度は緊急事態宣言が発令され、その影響より、十分数の被検者に実施出来ていないため、さらなる被検者に実施し、その効果の検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、様々な形態の有床義歯を装着している高齢者を対象に実施している。2020年4月に緊急事態宣言が発令されたため、被検者の募集が困難な時期があった。その後宣言の解除を待ち、協力が得られた被検者に対しては、徹底した感染対策のもと、試料の採取を再開したが、感染の第2波や二度目の緊急事態宣言の影響もあり、研究の進捗は予定より遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず被検者の安全を最優先し、遅滞分を実施する予定である。しかし、被検者は全員高齢者であり、コロナウイルスの流行状況を考慮しながら、慎重に進めて行きたい。研究の実施については、被検者に最低限の外出で済むように実施スケジュールの徹底を行う。また実施者の安全についても、試料採取時の感染対策を徹底し実施する。 これまでの結果により、舌・唾液中の細菌数、また肺炎関連菌の変化から、A-FWの含嗽が口腔ケアとして有用な可能性が示唆されている。しかし、被検者の生活環境等に結果が左右されることも、これまでの実施により判明した。今後もA-FWの含嗽効果の確立を、被検者を増やしてさらに検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は様々な形態の有床義歯を装着した高齢者を対象とした研究である。2020年度は新型コロナウイルスの流行、また2度の緊急事態宣言の影響により、予定していた被検者数を下回ってしまった。被検者の安全が最優先であり、2021年度も感染対策を徹底し、協力いただける被検者に対して本研究を実施予定である。 なお2021年度は、繰越金にて遅滞している被検者に対しての試料採取を実施するとともに、その成果をまとめて学会発表および論文投稿を予定している。
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