腫瘍などによる舌の切除により舌の欠損を生じた場合や舌の運動障害を生じた場合に起こる咀嚼・嚥下・構音障害を改善する目的で、舌接触補助床(PAP)の効果は過去より報告され、その有効性は幅広く認知されている。舌接触補助床の装着により、残存舌や皮弁とPAPが接触することによって、口腔期の嚥下機能が改善されることが報告されている。しかしながら、舌亜全摘や広範囲にわたる皮弁再建により、残存舌の体積が無く、可動性が著しく低い場合には、PAPが厚くなり、さらに開口障害を有する場合にはPAPの厚みにより、かえって食物の口腔内への挿入や食塊形成が困難となるため、PAPの形態は最適化されることが求められる。また、PAPの装着により口腔期の嚥下機能が改善されることが認知されているが、咽頭期に及ぼす影響について検証された報告は少ない。 そこで、本研究においては、舌切除後にPAPを装着し、摂食嚥下リハビリテーションを受けた症例において嚥下時におけるPAPの有効性を、咽頭でのStage Ⅱtransportを検証することにより解析し、評価するとともに、PAPの形態を3次元的に解析し、咽頭期の嚥下解析結果とあわせて分析を行った。 被験者は舌切除術を施行され当院顎顔面補綴科診療部にてPAPの製作を行い、摂食嚥下外来にて摂食嚥下リハビリテーションを行っており、本研究の趣旨を十分に理解して同意が得られた患者10名を研究対象とした。被験者に対し、嚥下造影画像、ならびに嚥下内視鏡検査、の画像の分析を行った。また、PAPの3次元画像解析を行うことにより形態分析を行った。さらに口腔期のPAPの効果を確認するために舌圧の測定を行った。舌欠損症例においては、舌接触補助床装着により舌圧が上昇していた。また嚥下内視鏡画像を用いたStageⅡTransportの解析については、PAPの有無による有意な差は認められなかった。
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