研究課題
口腔上皮異形成・上皮内癌から浸潤癌への進展に伴うマクロファージ (MΦ)の上皮内への局在変化の意義を解析するため、申請者は令和元年度にヒト舌癌細胞株SCC25とヒト単球性細胞株THP-1由来CD163陽性MΦ様細胞の共培養系を確立しwestern blot-based cytokine arrayに供し、直接共培養 (浸潤癌モデル)上清はそれぞれの単独培養および間接共培養 (上皮内腫瘍モデル)上清に比して、M1MΦ関連ケモカインとされるCCL20のシグナルが増強することを見い出した。令和2年度は舌癌細胞とMΦの異種細胞間相互作用を媒介する重要分子としてCCL20に着眼した解析を実施した。cytokine arrayの結果を検証すべく、同じ培養上清を用いたELISAを行うと、確かに直接共培養上清中ではCCL20の分泌が亢進していた。蛍光免疫染色では直接共培養後のSCC25でCCL20の蛍光強度が著しく増加しており、CCL20の主な産生源が舌癌細胞であることがわかった。興味深いことに、CD163陽性MΦ様細胞はSCC25に比較しCCL20の唯一の受容体であるCCR6を高発現しており、ヒト舌癌組織におけるCD163陽性MΦはCCR6を発現していた。CCL20とCCR6を高発現する舌癌症例はリンパ管侵襲に正の相関を示すとともにCD163陽性MΦ浸潤に有意に相関した。組換えヒト(rh)CCL20をCD163陽性MΦ様細胞に作用させるとERKシグナルを介しCD163発現を亢進させた。rhCCL20で刺激したCD163陽性MΦ様細胞から調製した培養上清はSCC25の生存能および運動能を促進した。一方、良性病変の口腔疣贅性黄色腫においては上皮下の泡沫MΦがM2形質 (CD163発現と血管新生)を示すのに対し、悪性形質を有する口腔苔癬様病変ではCD163陽性MΦが上皮内に浸潤していた。
2: おおむね順調に進展している
現在までの研究結果より、口腔上皮異形成や上皮内癌ではMΦの大部分は上皮下に浸潤するのに対し、浸潤性口腔癌では上皮内MΦが多数出現すること、口腔疾患におけるMΦはM1/M2理論のみでは答えの出せない多様な活性を示すことを見い出した。当初はM1MΦに注目して研究を開始したが、MΦの局在変化に焦点を当てた解析を行い、上皮内MΦとの相互作用により惹起される癌細胞のCCL20分泌が口腔癌の予防や診断に対する新たな標的となる可能性が示されたことから、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると評価する。
令和3年度以降は、CCL20で刺激されたMΦの腫瘍生物学的意義の解析に着手する。さらには、ヒト舌の臨床検体 (非腫瘍性上皮・上皮内腫瘍・浸潤癌の各段階の生検標本)を用いて予防や実地病理診断への応用を検討する。
次年度使用額が生じた理由は、cDNAマイクロアレイ未実施であったことである。次年度に実施を計画している「CCL20で刺激されたMΦの腫瘍生物学的意義の解析」にcDNAマイクロアレイを用いる予定としたため、これに関連する費用を次年度に繰り越すこととした。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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