申請者はこれまでに、直線的貫通孔をハニカム状に配列させたハニカムTCPを開発し、その幾何学的構造(直線的貫通孔の直径)を変化させることにより、異所性(ラット大腿部筋中)に骨組織と軟骨組織を特異的、選択的に誘導することに成功している。この結果を踏まえ、ラット膝関節欠損モデルによるハニカムTCPを使用した膝関節再生実験を行った。その結果、孔径300μmの直線的貫通孔を有するTCPにBMP-2を添加することにより、既存骨組織部には骨組織が、既存軟骨組織部位にはわずかに軟骨組織の形成を認めた。ウサギ骨組織欠損部位にハニカムTCPにより形成された骨組織には造血幹細胞ニッチの存在が確認され、長期間にわたり生体内の一臓器として機能する骨組織が形成された。軟骨組織形成についてはTGF-β、GDF-5をBMP-2と複合投与することで、より旺盛な軟骨組織形成が認められた。 申請者のように軟骨欠損部にハニカムTCPを用いて硬組織形成微小環境を再現し、軟骨組織を再生させる観点からの研究報告はほとんどなく、本申請課題は従来の軟骨再生研究とは一線を画する研究である。また軟骨再生を目的とした人工生体材料は市販されておらず、ヒトの軟骨疾患への適応も行われていない。さらに、生体材料内に軟骨・骨組織の双方を同時にかつシームレスに連続して分化誘導する生体材料の報告は皆無である。本材料によるヒト疾患における軟骨再生が可能となれば、数百万人と言われる患者の潜在的な需要から新規生体材料の大きなニーズを新たに創出できると考えられ、新規生体材料の産業化に対する貢献度は多大であると考えられた。
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