現在までに、健常人と口腔癌患者において、採便キットを用いた糞便採取および滅菌綿棒を用いた口腔内プラーク採取により、腸内細菌叢および口腔内細菌叢をT-RFLP法により解析を遂行し、多変量解析の一つである判別分析法により健常人と治療開始前の口腔癌患者間での異なる細菌叢クラスターを形成していることを明らかとした(dysbiosis)。また、治療開始後から経時的に(治療開始1週間後、4週間後、12週間後、退院後6ヶ月、退院後1年、退院後2年まで)採便と口腔内プラーク採取を行い、前年度の報告からさらに長期間の解析を進め、癌治療前後でのより長期的な細菌叢の変化を解析した。 口腔内細菌叢については、T-RFLP法に加え、種レベルにおける口腔内菌叢の菌叢構造の差異を見出すことを目的とし、次世代シーケンサーmiseqを用いたメタ16s解析を実施した。現在までの解析の結果、健常人と口腔癌患者間で異なる菌種が存在し、種レベルで菌叢構造も異なることが多変量解析(主成分分析ならびクラスター解析)により明らかにした。前年度までに行っていたT-RFLP解析と比較検討した結果、同様の傾向を示し、メタ16S解析とT-RFLP解析が高い相同性をもつことを確認した。 さらに、登録被験者においては、入院中や外来通院中などの診療で使用した末梢血の余剰から免疫関連細胞を測定し、治療開始前と治療開始後の経時的な免疫能の変化や、特定の細菌が免疫能の変化に与える影響を検討した。
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