研究課題/領域番号 |
19K19164
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今城 育美 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40636552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔多発癌 / Field cancerization / エピジェネティック異常 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
本研究では、九州大学顔面口腔外科で保存している切除標本を利用して口腔多発癌の病態を解明することを目的としている。口腔癌取扱い規約の変更の則り、口腔多発癌の定義を「2つの病巣間に連続性がなく臨床的に2cm以上離れている」ものと変更した。現在、臨床データの収集は完了し、染色体不安定性(chromosomal instability; CIN)、マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability; MSI)およびエピジェネティック異常について調査を行っている。 多発癌では初発癌の発症年齢が高く、発症部位は歯肉に多いこと、早期癌が多いこと、粘膜病変を併発する患者が多いこと、長期予後が悪いことに関してはこれまでと同様の結果であった。さらに、多発癌の定義には入らない再発癌を生じるものが70.3%と非常に高かった。第二癌を発生したもののうち、第三癌以降が発生するものは29.7%と高いことも特徴であった。 多発癌患者を除く、原発巣に対する根治的手術療法を行ったもののうち、原発巣から2cm以内に再発を認めた患者において、粘膜表面に病巣の首座を有する「表層再発」では上記の多発癌の特徴と類似した特徴を持ち、関連が疑われた。 口腔多発癌の臨床病理組織学的特徴、口腔多発癌のリスク因子に関する検討、口腔扁平上皮癌の再発癌に関する臨床病理組織学的検討について英文雑誌に投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔癌取扱い規約の定義変更による臨床データの修正、再発癌の臨床的特徴の調査などに時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
保存しているパラフィン包埋切片より癌およびFieldを形成する粘膜上皮についてPIK3CA、CDKN2A、TP53、SMAD4、CCND1の遺伝子変異を免疫組織化学的染色にて評価する。対照としていた単発癌群では再発を認めるものを小分類し特徴を確認する。また染色体不安定性(chromosomal instability; CIN)、マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability; MSI)およびエピジェネティック異常の検証も合わせて行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響で学会が中止となり、旅費の使用がなくなった。 また、主に計上していた物品費に関しては、次年度の遺伝子検索を行う際に使用する予定である。
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