研究課題
近年のがん治療は従来の「手術療法」「化学療法」「放射線療法」に加えて、免疫細胞の制御を応用した「免疫療法」が発展を遂げ様々な臨床応用が成されている。がんの形成・進展には、免疫細胞・間質細胞など周囲の微小環境が深く関与する。がん進行過程では、全身性あるいは局所的に免疫抑制環境となり、がん細胞が免疫細胞より逃避している。間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells; MSCs)は種々の免疫細胞の機能を調節し、優れた免疫調節能を発揮する。本研究では、MSCsの優れた免疫調節能とがん組織の免疫抑制機構に着目し、「MSCsを基盤とした新しい抗腫瘍治療の開発」を目的とした基礎的研究を行う。具体的にはMSCsによる抗腫瘍効果の有無を以下の2点に着目し、検討を行うこととした。①腫瘍細胞の選択的な細胞死誘導(直接的抗がん作用)、②免疫応答の賦活化効果(間接的抗がん作用)。研究初年度である今年度は①の選択的な細胞死誘導について解析をすすめた。まず、in vitroによる解析で、MSCsには強力かつ選択的な抗腫瘍性リガンドであるTRAIL(TNF-Related Apoptosis-Inducing Ligand)が発現することを明らかにした。この発現は、TNF-α刺激により濃度および時間依存的に誘導されることを確認した。さらに、このTRAIL発現誘導に関わるシグナル分子を網羅的に解析した。
2: おおむね順調に進展している
今年度はin vitroでの実験を行なった。細胞死誘導のメカニズム解析までは至らなかったがおおむね予定通り実験を遂行できている。
今年度明らかにしたTNF-α刺激によるMSCのTRAIL発現により実際に腫瘍細胞への抗腫瘍効果が得られるか解析を行う。さらに抗腫瘍効果がTRAILによる直接的なアポトーシス誘導であるか、また、その他の液性因子を介したアポトーシス誘導であるか詳細な解析を行っていく。さらにアポトーシス誘導された腫瘍細胞の免疫学的賦活化効果へ与える影響があるかも解析を進める予定である。加えて、これらの抗腫瘍効果が既存の抗癌剤との併用により、相乗/相加的効果があるか否かを解析し、MSCを用いた免疫学的抗腫瘍効果の可能性について探る。
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