研究実績の概要 |
本研究は、過去に、低NOx 食を長期投与したマウスにおいては内蔵脂肪型肥満を含む糖尿病様疾患が発症することを報告し、その際、低NOx 食投与群において、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ (PPAR-γ) の発現が低下することをウエスタンブロットにより観察したことをもとに研究の着想を得ている。 PPAR-γ の活性化剤であるロシグリタゾン(Rosiglitazone)は、抗糖尿病薬として市販されており、PPAR-γ の発現低下は低NOx 食投与による糖尿病様疾患の発症に重要な役割を有していることが示唆されている。本研究は、内臓脂肪型肥満に見られるこのPPAR-γ のdownregulationが癌患者の腫瘍の進展や抗癌剤感受性にどのような影響を与えるか検討するところから研究を開始している。癌細胞株に抗癌剤を曝露したところ、転写因子 c-fos, c-jun の発現が上昇していることを確認している。さらに、c-fos, c-jun が制御する産物として、interleukin 24 (IL-24) の発現上昇を見出した。IL-24 は、抗炎症性サイトカインであると同時に、癌細胞を死滅させる効果を有していることが多数報告されている。また、PPAR-γ の活性化剤であるRosiglitazoneは、c-fos family の発現を抑制することが報告されている。 現在、抗癌剤依存的に惹起される c-fos, c-jun の発現上昇がIL-24 の発現に関与しているのではないかと推察し、研究を進めており、内臓脂肪型肥満の患者と、そうでない患者では、抗癌剤感受性に違いが出るのではないかと推察している。
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