研究課題
口腔癌の手術前にbleomycin とTS-1 による化学療法が施された口腔扁平上皮癌患者40名の抗腫瘍効果を検討した。化学療法後、低中分化型腫瘍の75%で腫瘍が完全に消失していたものの、高分化型腫瘍では36% にとどまっていた(P < 0.05)。Genomics of Drug Sensitivity in Cancer (GDSC)を用いて、in vitro における頭頸部扁平上皮癌細胞株の抗癌剤感受性と各細胞株の組織学的分化度との間の相関関係の有無を検討したところ、相関関係は無いことが判明した。このことは、in vivo における抗癌剤感受性は、癌細胞そのものの抗癌剤感受性のみならず腫瘍微小環境が影響していることを示している。The Cancer Genome Atlas (TCGA) を用いた解析から、IL-6 の発現量は低中分化型腫瘍の方が高分化型腫瘍と比較して有意に高くなっていた。一連の結果は、最終年度にEuropean Journal of Pharmacology 誌に報告した。現在、群馬大学口腔外科を2009 年以降受診した口腔癌患者600 名の初診時のBMI (Body Mass Index)および、腫瘍の分化度を調査している。その結果、BMI が29 を超える患者集団においては低中分化型腫瘍を発症する割合が、有意に増大していることを確認している。このような傾向は、男性患者においてのみ観察され、女性患者では観察されなかった。このことから、抗癌剤感受性の指標となる腫瘍の分化度と内臓脂肪型肥満との間には、当初の仮説「内臓脂肪型肥満発症経路は、抗癌剤耐性を促す」とは、正反対の現象「内臓脂肪型肥満は、抗癌剤感受性良好な低中分化型腫瘍の発生に関与している」を見出した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
European Journal of Pharmacology
巻: 945 ページ: 175611~175611
10.1016/j.ejphar.2023.175611