研究課題/領域番号 |
19K19173
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
太田 麻衣子 岩手医科大学, 歯学部, 研究員 (60824993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / NGF / IL-6 |
研究実績の概要 |
本研究代表者は、前年度(2020年度)までに実施した間葉系幹細胞(MSC)が有する損傷神経再生能力の発現に関わるサイトカインモデル分子のピックアップ作業により、モデルキー分子としてのインターロイキン-6(IL-6)を捉えることに成功した。そこで、令和3年度(2021年度)には、このIL-6が、どのような分子メカニズムでMSCによる神経再生効果の発現に関わるのかについての調査を実施した。 神経系の修復や再生には神経成長因子(NGF)が重要な役割を果たしていることは、広く知られている。一方、マクロファージ等から分泌されるトランスフォーミング成長因子-β1(TGF-β1)は免疫応答の制御に重要な役割を果たすとともに、NGFの発現を誘導することが知られている。しかし、TGF-β1がMSCにおけるIL-6の発現にどのような細胞内シグナルを介して影響するのかについては明らかとされてはいなかった。興味深いことに、TGF-β1により誘導されるIL-6の発現増強効果は、TGF-β Type1受容体阻害剤ならびにMEK阻害剤によって抑制されたが、Smad経路阻害剤の効果は認められなかった。このことから、MSCでは、TGF-β1がMEK/ERKを介する細胞内シグナル依存的にIL-6の発現を誘導することが示された。 IL-6は、炎症性ならびに抗炎症性の両方の性質を有することが知られている。現在、MSC由来のIL-6が神経再生促進的に働くのか、あるいは神経再生抑制的に働くのかについて、神経突起伸長モデル細胞として知られるPC12細胞とMSCとの共培養システムを用いて確認中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度(2021年度)には、MSCが有する損傷神経再生能力の発現に関わるサイトカインモデル分子としてのIL-6が、どのような分子メカニズムで産生されるのかについて明らかとすることに成功した。しかしながら、MSC由来のIL-6が神経再生促進的に働くのかどうかを明らかとするための調査の進行に若干の遅れが生じている。また、これまでにピックアップしたIL-6以外のサイトカインモデル分子について、その発現制御機構や損傷神経再生能力について明らかとする作業が当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度(最終年度)には、1) MSCが有する損傷神経再生能力の発現に関わるサイトカインモデル分子としてのIL-6が、神経再生促進的に働くのかどうかをin vitro実験で明らかとし、2) その他のサイトカインモデル分子についても1)と同様に神経再生促進的に働くのかどうかを明らかとし、3) マウス歯周靭帯神経損傷モデルを樹立し、組織修復性サイトカインTGF-βならびに1)と2)で絞り込んだターゲット分子の阻害剤、siRNAあるいはターゲット分子自体の局所投与により、歯周靭帯組織に配される感覚神経の再生が促進あるいは抑制されることを明らかとしたい。 これらの研究成果により、神経組織修復因子としての臨床応用が期待されるNGFによる神経再生効果を最大限に引き出すための分子学的基盤を確立したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでにピックアップしたIL-6以外のサイトカインモデル分子について、その発現制御機構や損傷神経再生能力について明らかとする作業が当初の計画より遅れており、2021年度に引き続き、次年度にも実施する必要性が生じたため。
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