研究課題/領域番号 |
19K19178
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
古川 明彦 日本大学, 歯学部, 助教 (00731738)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 舌癌 / 異常疼痛 / TRPチャネル |
研究実績の概要 |
舌癌発症における異常疼痛の解明のため舌癌モデルラットによる基礎的研究を行った。 まず,ラット由来の扁平上皮癌 (SCC-158) 細胞を培養し,6週齢のFischer (F344) 雄性ラットの舌に26G注射針を用い注入することにより舌癌を発症させ,舌癌モデルラットを作製した。コントロールとして舌にPBSを注入した。舌癌モデルラットおよびコントロールラットを用い,イソフルラン 吸入による浅麻酔下に,デジタルフォーセプスにて舌に機械刺激を与え逃避反射閾値の経日的な計測を行ったところ舌癌モデルラットのSCC接種後2日目から21日目まで,舌刺激による逃避反射閾値は有意に低下した。また,異常疼痛が発現したSCC細胞接種後7日目の三叉神経節を取り出し免疫蛍光染色による各種レセプターの検索を行った。舌投射PAR2/TRPV4 陽性TGニューロン発現に変化は見られなかったが、TRPV4陽性TGニューロンにおけるリン酸化TRPV4量の増加を認めた。さらに舌へのPAR2拮抗薬であるFSLLRY-NH2の局所投与を行ったところ,SCC接種部による逃避反射閾値の低下を抑制した。また,SCC細胞接種後の舌へのFSLLRY-NH2またはSTIの連日投与を行った結果,舌への機械刺激による逃避反射閾値の低下を有意に抑制することが確認された。 以上の結果より,SCC接種後に生じる舌の癌性疼痛には,舌投射TGニューロンにおけるPAR2シグナルを介したTRPV4のリン酸化が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究結果より,舌投射三叉神経節ニューロンでのPAR2とTRPV4 の共発現に変化は見られなかったことや、CXCL12の検出がうまく行われなかった。この検出方法に関しての再検討や、実験材料・資料の調達に時間がかかっている。また,癌細胞の培養がうまく行われず、新たな細胞株による培養が必要であったため。 その他、シャーレなどの海外製品や輸入製品に関して制限や遅れが生じたたため、実験の進行に支障が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により舌癌発症の異常疼痛に関してTRPチャネルが関与している可能性が示唆された。舌癌モデルラットに関してモデル作製は問題なく行えていると考えられたため、現在の実験結果に加え、ほかのTRPチャネルについても検索を行う予定である。また,トリプシンの阻害薬を用いたTRPチャネルの変化やCXCL12とTRPチャネルの関係について再度実験方法を変更し更なる検索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加予定であった日本口腔外科学会および口腔科学会などの学術大会が中止となったため残金が発生した。繰越金と令和三年度助成金を合わせて、実験試料・薬剤の調達や結果解析のための物品費、情報収集のための学会参加費に使用する予定である。
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