2003年にビスホスホネート系製剤(BPs)の注射製剤の重大な有害事象の一つとしてBP製剤関連顎骨壊死(BRONJ)をMarxが報告して以降、他の骨代謝に影響する薬剤も顎骨壊死を発症する報告が認められた。顎骨壊死に対する治療方針は、手術療法に良好な結果を認める報告が以前より多く見られるが、手術範囲や適応基準など課題が残っている。 ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)が骨粗懸症治療薬として使用されており、PTH使用者の顎骨壊死が改善されたという報告も散見される。PTHの適応・使用にも制限があり、PTHに代わる新たな代替薬の開発が望ましい。PTHは単回投与で骨吸収が、間欠投与で骨造成が引き起こされる。PTHと同様のシグナル伝達経路を持つアドレナリンβ2受容体アゴニストであるイソプロテレノール(ISO)も、マウス骨芽細胞様MC3T3-E1細胞へのISO単回投与では骨芽細胞の骨細胞への分化を抑制し、間欠的投与ではAlpの発現が抑制されない。in vivoにおけるISOの間欠的投与の骨組織へ対する作用はまだ知られていない。 本研究ではISOによる循環器系の影響を考慮し、ISOとPTHが骨形成においてともに関与していると考えられるオステオポンチン(OPN)の動態を、マウス大腿神経切除モデル(Nx)にPTH投与することで検討した。 OPNは骨代謝に必須の非コラーゲンタンパク質と知られ、PTH投与による骨量増加はOPNを介した経路の活性化により引き起こされる。PTHはNxによる骨量減少を予防できるが、骨量増加までは至らなかった。Nxによって、Wnt3aやFndc5の発現が抑制されたことから、Nxによる骨量減少はWnt3a経路やOPNを介したirisin分泌などの複数の抑制経路を示唆した。今後は骨量減少経路に対し、PTHが抑制しているか、ISOが同様なシグナル経路を辿るかなどの更なる検討が必要である。
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