研究課題/領域番号 |
19K19196
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤田 佑貴 岡山大学, 大学病院, 助教 (10710220)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / フィルター法 / 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / 骨組織再生 |
研究実績の概要 |
骨再生医療分野においては、ES細胞や骨髄由来間葉系幹細胞を用いた研究が主流であり、国内外において多くの研究報告がある。しかしこれら細胞は採取、調整 が困難であり臨床応用には倫理的・技術的に問題点が多く臨床応用には至っていない。一方脱分化脂肪細胞は成熟脂肪組織から脱分化現象を介して産生される細胞であり、採取・調整は容易であることから再生療法へsourceとして新規性が期待されている。本研究では脱分化脂肪細胞から骨芽細胞への分化法を検討する。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり研究進捗状況が遅れたが2019年度は、成熟脂肪細胞が浮遊する性質を応用したフィルター法にて、マウスから脱分化脂肪細胞を確実に採取することに取り組んだ。確実に採取できる ことを確認後、採取した脱分化脂肪細胞とマウス脂肪組織中から採取した間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化能を石灰化培地添加条件でのアリザリンレッド染色、 ELISA法によるALP活性を比較した。これらの結果として、脱分化脂肪細胞の最適採取方法としてフィルター法は有用であり、このフィルター法を用いて採取した 脱分化脂肪細胞は脂肪組織から採取した間葉系幹細胞と同等の骨芽細胞への分化傾向を示すことが明らかとなった。本研究結果は、採取・調整が容易であること から骨再生医療分野において臨床応用されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度は、脱分化脂肪細胞の最適な採取条件および骨分化条件を明らかにする計画であった。脱分化脂肪細胞を採取するために用いたフィルターに関しては、40μmのメッシュを用いることが最適であった。また、マウス脂肪組織中から採取した間葉系幹細胞との骨芽細胞分化能を比較したところ、石灰化培地で培養すると、脱分化脂肪細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞ともに3週間後にはアリザリンレッドに強陽性を示した。脱分化脂肪細胞と間葉系幹細胞をELISA法にて ALP活性を比較したところ、石灰化培地培養初期では、間葉系幹細胞が初期では高いALP活性を示したが、石灰化培地培養12日以降では脱分化脂肪細胞の方が高いALP活性を示した。 このように、脱分化脂肪細胞の最適採取方法、間葉系幹細胞との骨芽細胞分化能の比較に関するデータが蓄積できたため、おおむね順調に進展していると判断したが、2020年度に関しては新型コロナウイルス感染症の対応等もあり研究の進行状況に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
脱分化脂肪細胞の最適な採取方法や間葉系幹細胞との骨芽細胞への分化能を比較するデータは得た。しかし、遺伝子レベルでの骨芽細胞分化への検討は十分ではない。そこで、令和3年度は、RT-PCR法を用いて、骨芽細胞への分化に関連するRun2, Osteopontin, DLX5, Osterix, Osteocalcinについて脱分化脂肪細胞と脂肪 組織から採取した間葉系幹細胞を比較する。また、人工生体材料に脱分化脂肪細胞を播種させ、生体内での骨組織誘導について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の対応等により研究の進行に遅れが生じたが、次年度、計画に基づき必要な物品等を購入する予定である。
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