研究課題
本研究は、顎顔面口腔領域に病変を生じる遺伝性疾患を対象に、その診断・治療法の開発を目指して、iPSC誘導・培養法に関わる様々なリスクを排除すべく、宿主細胞に遺伝子挿入のないセンダイウイルスベクター (SeVdp)で山中四因子を導入し、インテグレーションフリー・無血清・無フィーダー培養条件で各患者由来組織よりそれぞれに疾患特異的iPS細胞(DS-iPSCs)を誘導・樹立し、CRISPR /Cas9システムを用いて各種病原変異遺伝子の“ゲノム手術”を行い、その細胞特性解析及び病態モデルを作成するとともに、遺伝性顎顔面疾患の病態解明、診断・治療法の開発を目標とした。DS-iPSCsの樹立・維持およびその特性解析のため培地 (無血清培地hESF)、増殖因子 (インスリン, FGF2, ヘパリン等)、抗体 (未分化マーカー, 分化マーカー)、その他多数の試薬、ピペットやディッシュ等のプラスチック製品を購入した。病態モデル作成のため、さらに、増殖因子、阻害物質、プラスチック製品を追加購入し、DS-iPSCsを上皮細胞、間葉系幹細胞あるいは軟骨組織に分化誘導するプロトコールを無血清条件下に作成すべく播種細胞数、播種形態、添加因子の作用時間の調整等を行った。また、2019年4月に埼玉県川越で行われた第73回日本口腔科学会学術集会にて先行実験の基底細胞母斑症候群疾患特異手的iPSCの病態モデルについて発表し、同内容の研究者と情報交換を行い、知見を深めた。
2: おおむね順調に進展している
顎顔面口腔領域に病変を生じる各種遺伝性疾患患者由来の末梢血単核球を採取し無血清培養下に培養後、センダイウイルスベクターと著者の所属する研究室で開発された無血清培地hESF9Fを用いてインテグレーションフリー・フィーダーフリー・完全無血清培養系にて疾患特異的iPS細胞 (DS-iPSCs)の樹立に成功した。ゲノム編集に関しては、DS-iPSCsのうち鎖骨頭蓋異形成症患者由来iPSCをモデルに条件検討を行っているが、現時点では、ゲノム編集に成功したクローンの抽出には至っていない。しかしながら、健常人末梢血単核球由来iPSCを用いて上皮細胞および間葉系細胞の誘導を無血清条件下に検討し、上皮細胞では上皮幹細胞マーカーの一つであるTP63の発現を、間葉系細胞ではCD73、CD90、CD105の発現を、軟骨組織ではPAS/AlucianBlue染色陽性となる条件を確立することができた。現在は各系譜の細胞の共培養の条件等を検討している。
インテグレーションフリー・フィーダーフリー・無血清培養培地(hESF9)を用いて誘導したDS -iPSCsに対し、CRISPR /Cas9ゲノム編集システムにて各責任変異遺伝子の ゲノム編集を行う。それらゲノム編集前後(変異(+),(-))のDS-iPSCsそれぞれを、2019年度、無血清条件で検討した分化方法にて上皮系細胞および間葉系細胞に分化させ、in vitroおよびin vivo で共培養し、組織学的検討、蛋白・遺伝子発現の検討を行い病態モデルとしての有用性を検討する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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