研究課題
本研究は、顎顔面口腔領域に病変を生じる遺伝性疾患を対象に、その診断・治療法の開発を目指して、iPSC誘導・培養法に関わる様々なリスクを排除すべく、宿主細胞に遺伝子挿入のないセンダイウイルスベクター (SeVdp)で山中四因子を導入し、インテグレーションフリー・無血清・無フィーダー培養条件で各患者由来組織よりそれぞれに疾患特異的iPS細胞(DS-iPSCs)を誘導・樹立し、CRISPR /Cas9システムを用いて各種病原変異遺伝子の“ゲノム手術”を行い、その細胞特性解析及び病態モデルを作成するとともに、遺伝性顎顔面疾患の病態解明、診断・治療法の開発を目標とした。ゲノム編集による遺伝子改変クローンは抽出することができなかったが、DS-iPSCsのコントロールを野生型iPSCとし、病態モデルとしての可能性を検討した。昨年度条件検討した上皮細胞、間葉系幹細胞あるい軟骨組織に分化誘導するプロトコールを用いて、DS-iPSCsおよび野生型iPSCを分化誘導した。膜性骨の劣成長や多数過剰歯を認める鎖骨頭蓋異形成症由来iPSCの軟骨組織は野生型iPSCのそれと比較し軟骨基質が疎であり、病態の一部を模倣できた可能性が考えられたが優位な差を見出すことができず、さらなる検討が必要であることが示された。一方で、顎骨内多発嚢胞を発症する基底細胞母斑症候群についてはDS-iPSCsの樹立に成功するとともに、責任遺伝子のPTCH1において新規変異が検出されたため論文投稿を行い掲載されるに至った。
3: やや遅れている
ゲノム編集により遺伝子改変したクローンの抽出に成功しておらず全体的に遅延しているため上記区分とした。
インテグレーションフリー・フィーダーフリー・無血清培養培地(hESF9)を用いて誘導したDS -iPSCsに対し、CRISPR /Cas9ゲノム編集システムにて各責任変異遺伝子のゲノム編集を引き続き行う。また、それぞれの疾患の罹患モデル細胞への分化誘導条件を再検討する。具体的には、分化誘導時の播種細胞数、播種形態、添加因子の作用時間の調整等で検討する。
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