疫学調査によると、神経障害性疼痛患者の約2/3が女性である。このような性差が生じる原因として、女性ホルモンであるエストロゲンが症状を増悪することが示唆されている。しかし、そのメカニズムについては未解明な点が多い。本研究では性周期におけるエストロゲンの多寡を再現した神経障害性疼痛モデルラットを用いてエストロゲンが神経障害性疼痛に及ぼす影響とその作用機序について検討を行った。その結果、行動学的検討によりエストロゲンは触刺激に対する閾値を低下させることが明らかとなった。また、統計学的検討は行えていないが、免疫染色及びウェスタンブロッティングにより、神経障害性疼痛発症初期ではエストロゲンがミクログリアを、慢性期ではアストロサイトの活性化を増強している可能性が考えられた。以上のことから①エストロゲンは神経障害性疼痛の症状を増悪すること②その機序として、発症初期ではミクログリアを、慢性期ではアストロサイトの活性化を介し、神経障害性疼痛の症状を増悪している可能性が示された。今後の課題として①神経障害性疼痛発症初期でミクログリアを、慢性期ではアストロサイトの活性化を抑制することでエストロゲンの影響を検討すること②エストロゲン受容体拮抗薬を用いてミクログリアやアストロサイトの活性化を検討することが必要であると考えられる。
|