研究課題
がん治療で化学療法・放射線療法を施行する場合,口腔内の有害事象として口腔粘膜炎を生じることがある.口腔粘膜炎が重篤化すると,治療の完遂率を低下させ患者のQOL低下を招くことが危惧される.特に,頭頸部癌に対し化学療法や放射線療法を施行する場合,口腔粘膜炎が重症化しやすい.現在,口腔粘膜炎に対する有効な治療法はなく,含嗽や鎮痛薬などを使用し局所炎症のコントロールや疼痛コントロールを主とした対症療法が一般的に行われている.近年,栄養学的観点からグルタミンなどのアミノ酸投与により口腔粘膜炎の重篤化を防ぎ,治癒促進に効果があることが報告されている.本研究では口腔粘膜炎に対する栄養学的な治療法として,皮膚において創傷治癒促進効果が示唆されているジペプチドのプロピルヒドロキシプロリンに注目した.ジペプチド投与による粘膜炎の治癒促進効果が示されれば,化学放射線性口腔粘膜炎に対する新しい治療法となることが期待される.2年目の研究として,Balb/cマウスで放射線性口腔粘膜炎モデルの構築を行った.放射線性口腔粘膜炎は放射線照射後7日~11日の間に増悪することがわかった.プロピルヒドロキシプロリン投与による影響についてはプロピルヒドロキシプロリンが創傷治癒に良い効果を表しているかどうかは,今年度の研究で行ったBalb/cマウスの個体数では明らかではなかった.令和3年度ではin vitro,in vivoでの研究をさらに進めていく予定である.
4: 遅れている
化学放射線療法による口腔粘膜炎モデルでは,口腔粘膜炎を生じる前に体重減少が進み,有害事象が強く作成が困難であった.そのため放射線療法による口腔粘膜炎モデルの検討から開始となり研究に遅れを生じた.
研究計画に従い、研究を進める予定である。in vitroではヒト口腔線維芽細胞の遊走能評価を今年度は行う予定である.in vivoでは放射線性口腔粘膜炎に対するプロピルヒドロキシプロリンの治癒促進効果について実験に使用するマウスの個体数を増やし検討する予定である.
研究費を厳密に調整し執行したため次年度使用額を生じた。次年度の物品費や研究成果報告などに使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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