研究課題/領域番号 |
19K19207
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
大橋 伸英 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70783752)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 口腔粘膜炎 / プロピルヒドロキシプロリン |
研究実績の概要 |
がん治療で化学療法・放射線療法を施行する場合,口腔内の有害事象として口腔粘膜炎を生じることがある.口腔粘膜炎が重篤化すると,治療の完遂率を低下させ患者のQOL低下を招くことが危惧される.特に,頭頸部癌に対し化学療法や放射線療法を施行する場合,口腔粘膜炎が重症化しやすい.現在,口腔粘膜炎に対する有効な治療法はなく,含嗽や鎮痛薬などを使用し局所炎症のコントロールや疼痛コントロールを主とした対症療法が一般的に行われている.近年,栄養学的観点からグルタミンなどのアミノ酸投与により口腔粘膜炎の重篤化を防ぎ,治癒促進に効果があることが報告されている.本研究では口腔粘膜炎に対する栄養学的な治療法として,皮膚において創傷治癒促進効果が示唆されているジペプチドのプロピルヒドロキシプロリンに注目した.ジペプチド投与による粘膜炎の治癒促進効果が示されれば,化学放射線性口腔粘膜炎に対する新しい治療法となることが期待される.3年目の研究として,プロピルヒドロキシプロリンがBalb/cマウスにおける放射線性口腔粘膜炎にどう係るかの検討を行った。放射線性口腔粘膜炎は放射線照射後7日~11日の間に増悪することが判明したが、プロピルヒドロキシプロリンを急性期に投与すると粘膜炎の増悪、経口摂取不良による体重減少をもたらすことが示唆された。また、放射線照射の位置により粘膜炎発症の再現性の確保が困難であることも示唆された。令和4年度ではin vitro,in vivoでの研究をさらに進めていく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究者の所属施設の変更に伴い,新たな所属施設で動物実験の倫理申請の必要があり実験開始が遅れた.実験環境の整備にも時間を要した。また新型コロナウイルス感染症の流行のため,マウスの麻酔に使用する薬剤が入手困難であり,納入まで半年以上かかったことも遅れた原因である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い,研究を進める予定である. in vitroではヒト口腔線維芽細胞の増殖・遊走能評価について検討を行う予定である. in vivoでは放射線性口腔粘膜炎に対しては,再現性を確保するためにマウスの個体数を増やし検討を行う予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイス感染症による実験試薬が入手困難であったため.また,研究者が本年度より新たな研究施設へ移動したことによる実験環境の整備に時間を要した. マウスを使用し放射線誘発性口腔粘膜炎の追加実験を行うために,残額は,試薬の購入とマウスの購入に充てる予定である.また,研究成果を報告するために学会発表の費用に充てる予定である.
|