研究実績の概要 |
多形腺腫の組織多彩性を検証する目的で多形腺腫の病理組織診断がなされた104例を対象とし、Seifert分類に準じて病理組織学的解析を行った。腫瘍の上皮成分において、大唾液腺と小唾液腺症例との間で有意な差は認められなかった。間質様成分ではSeifert分類の各タイプにおいて大唾液腺症例と小唾液腺症例との間に有意差が認められた。粘液軟骨様構造 (subtype 2c) の発生率は小唾液腺症例 (7.9%) よりも大唾液腺症例 (35.7%)の方が高値であったのに対し、硝子化/線維化構造の比率は大唾液腺症例 (50.0%)よりも小唾液腺症例 (59.2%) でやや高値であった。これらの組織学的相違は、発生母組織自体の組織構築の違いが大唾液腺と小唾液腺症例間の差異に関連している可能性が考えられた。 前述の結果にて有意差を認めた間質様成分に注目し、口蓋腺症例を対象とした免疫組織化学的検索を行った。SOX10陽性細胞率はcellular type (84.7%) が最も高値を示し、次いでclassic type (58.3%)、stroma-rich type (45.5%) の順であった。それぞれ3つのsubtype間で有意差 (p<0.001) を認めたことから、Seifert分類は被膜近傍の腫瘍性筋上皮細胞の出現比率と深く関係している可能性が示された。EGFRは主として導管上皮様細胞の細胞膜で陽性所見が認められた。EGFRのimmunoreactivescoreでは,cellular-rich type (スコア3) で最も高値を示し、次いでclassic type (スコア1-2)、stroma-rich type (スコア0-1) であったことからcellular-rich typeは他のtypeと比較し腫瘍細胞の増殖・分化といった生物学的活性が高い可能性が示唆された。
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