研究実績の概要 |
研究期間全体を通じて実施した成果は、免疫療法の局所少量投与における有用性である。免疫療法が口腔癌治療で第4の柱として期待されているが、反して1型糖尿病など重篤な免疫関連有害事象(irAE)が報告されている。抗PD-1抗体を動注療法で、局所に少量投与することで、全身投与と同等の抗腫瘍効果が得られれば、irAEの軽減と医療費の削減にもつながると考えた。基礎的検討としてマウスを用いて抗PD-1抗体少量局所投与と全身投与の抗腫瘍効果および全生存期間(OS)、癌周囲の免疫環境の検討をおこなった。材料・方法は、マウス頬粘膜OSCC株(Sq-1979)を用いて、薬剤はanti-mouse PD-1を使用を行った。細胞株は、フローサイトメトリーでPD-L1の発現を確認した。マウス背部に細胞株を移植し、抗PD-1抗体の局所少量投与群(30mg/body)、全身投与群(300mg/body)、Control群に振り分け、投与開始から29日目での腫瘍縮小率ともう1群でOSを比較した。さらに,投与後の皮下で増殖した腫瘍を摘出し,PD-L1, CD8T細胞, Perforin, GranzymeB,Tregの発現を比較検討した。その結果、局所少量投与群と全身投与群で同程度の抗腫瘍効果があり、両群ともControl群と有意差(p<0.05)を認め、OSも有意差をもって延長を認めた。また、局所少量投与群でGranzymeBの発現が多いことが明らかとなった。結論として、抗PD-1抗体の局所少量投与は、全身通常量投与と同等の抗腫瘍効果とOSを認めたため、口腔癌における局所少量投与は有用である可能性が示唆された。最終年度は、上記研究内容を論文にまとめ、Anticancer Researchへ投稿して受理・掲載された。
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