研究実績の概要 |
顎顔面領域において顎骨欠損が生じた場合高度な再建手術が必要となるため, 積層造形技術の再建医療への応用が期待されている. 再建医療として積層造形法によるフリーカスタムメイドの再建材料の開発や, チタン表面の骨形成能を向上させる新たな表面処理の開発が行われているが, チタンと骨表面との骨結合を評価した研究は少ない. 骨形成能を促進させる混酸加熱処理法Mixed-acid and heat treatment (以下、MAH法)を複合させた次世代再生チタン人工骨開発を目的に研究を行っている. [研究内容]ラット頭蓋骨に適合する屈曲率を有するチタン人工骨を積層造形法にて作製した. チタン人工骨は, 表面処理として混酸加熱処理を行ったMAH群と,表面処理を行わない無処理群とを比較検討した. ラットの頭蓋骨表面とチタン人工骨をスクリューにて固定した. 埋植後1, 4, 8, 12週後に頭蓋骨を摘出し, 24時間以内に力学試験を行い骨とチタンとの結合力を評価した. また骨より引き剥がされた試験片を電子顕微鏡及び非脱灰研磨標本, V.Goldner染色による組織学的観察を行った. 結合力評価試験において, 無処理群と比較しMAH群の骨結合力は有意に上昇していた. 組織学所見においてもMAH群ではチタンと皮質骨表面に活発なリモデリング像・骨形成像が認められた. また水接触角による親水性評価ではMAH群では無処理群と比較し表面の濡れ性状が明らかに上昇していた. MAHにより, 早期かつ強固な皮質骨とチタンの結合が行われることを明らかとした.
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今後の研究の推進方策 |
骨欠損部への補填材として混酸加熱処理を施した積層造形チタンを埋植し骨形成促進機能を明らかとした.今後は骨補填材として積層造形チタンを用いた研究と平行して、生体ガラスにも着目をして研究を遂行する予定である.生体本来の治癒能を活用するため傷からの浸出液を保存する Moist wound healing が推奨されている.湿潤環境を保つのに適したホウ酸ガラス繊維(以下13-93B3: 6.0Na2O,7.9K2o,7.7MgO,22.1CaO,54.6B2O3, 1.7P2O5(mol%))は皮膚の創傷を早期に治癒させたと報告(biomaterials 532015.p379-391)されており、FDA承認を受けている.われわれは本技術に着目し抜歯後の骨欠損部位に13-93B3 を填入することで治癒が促進され、良好な骨形態の回復につながるのではないかという着想に至った.しかしながら13-93B3の骨欠損への影響を明らかにした報告はない為、同実験計画を立案した.本年度末にプレ実験としてラット頭蓋骨に骨欠損を作製し13-93B3を埋植した.ラット頭蓋骨欠損に13-93B3を埋植12週後に安楽死させ、マイクロCTを用いて、ラット試験片の骨形成評価を行う.実験手技や必要な機材に関しては準備が完了している状態である.次年度はラット匹数を増やして実験を行う計画である.また非脱灰研磨標本作製しHE , Von Kossa染色を行い骨形成を組織学的に評価する予定である.
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