研究課題/領域番号 |
19K19217
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
石川 敬彬 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (00825292)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 酸化ストレス / xCT |
研究実績の概要 |
生体の抗酸化ストレス機構の一因を担うシスチン輸送体xCTの過剰発現が悪性腫瘍の化学療法等への抵抗性や浸潤・転移能との関係性が報告されている。xCTによってシスチンが細胞内に取り込まれ、細胞は取り込んだシスチンを利用してグルタチオンなどの酸化ストレス制御に関わる酵素の産生などを行い、細胞の恒常性を維持する。われわれは口腔癌細胞でのxCT発現率の変化に伴いその抵抗性や浸潤・転移能との関係性を明らかにすることを目的として実験を行っている。口腔癌より樹立された培養細胞株であるHSC-2、HSC-3、HSC-4およびSASを用いて細胞成長阻害実験とxCTタンパク発現量および遺伝子発現量の測定を行った。まずは、Western Blottingにて口腔癌細胞の種別によりxCTの発現率に差異があることを明らかにし、xCtの発現率の異なる複数種類の口腔扁平状癌細胞由来の培養細胞に対して抗xCT薬剤を濃度別に投与することで生じる細胞生存率の差異の測定と抗酸化ストレスに関連するタンパク発現の解析を行い検証を行った。xCTは口腔癌細胞のHSC-2・SASにて強い発現が認められたが、HSC-3、HSC-4はそれらと比較して低発現であった。xCT阻害剤(スルファサラジン・エラスチン)をそれぞれの口腔癌細胞に投与し細胞増殖率の測定を行ったところ、SASには高い増殖抑制が認められたがHSC-2はHSC-3,4と比較して低い増殖抑制であった。xCTの発現量とは無関係に増殖抑制が行われているようであった。xCT阻害剤による口腔癌細胞の増殖抑制の機序にはxCTの発現量以外の要因が存在している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予想されたxCTの発現量によってのxCT阻害剤の細胞増殖抑制の結果が過去の文献より収集しえた結果報告と一部矛盾が生じており、その原因究明を行う必要があり、研究計画を一部見直してxCT以外の要因検索を行うこととした。 また、研究年度上半期にCovid-19の流行により研究機関の稼働が一時停止した。
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今後の研究の推進方策 |
xCT阻害剤により口腔癌細胞の細胞増殖抑制を引き起こすターゲットとしてxCT以外の要因が存在する可能性がある。そのため、xCT阻害剤により酸化ストレス制御機構の動態測定を生化学実験により行うとともに、その要因検索も行うこととする。 FSP1がxCT機能阻害時に発現・酸化ストレス制御に寄与するとの報告があり主にFSP1の発現動態の解析を追加し検討する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験中断を余儀なくされた時期が生じたことと、細胞生存率測定によるxCT阻害剤の効能が既知の報告と異なる結果があり、その原因究明を行うために実験計画の見直しを行ったため、生化学実験の進行が遅れている。近年の報告でFSP-1の発現がxCT阻害剤の効果を阻害する可能性があるとされており、翌年度にはFSP-1の発現率測定も行うこととし、予算の一部を利用する。また、当該の研究計画に沿っても使用する予定としている。
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