研究実績の概要 |
放射線耐性細胞(HSC-3)・感受性細胞(KOSC-2)を新規に同定したが、SEの検索にあたり標的抗体の選定が困難であったために、放射線耐性に関するエピゲノムの変化を網羅的に解析した後に、転写因子やSEなどを予測することができないかと考えた。そのため、HSC-3およびKOSC-2に対して、0Gyと8Gy照射した細胞をそれぞれATAC-seq解析に提出した。ヒートマップ階層的クラスタリング、各変動ピークの近傍遺伝子を抽出し、DAVID GO解析やモチーフ解析を行った。これにより、放射線抵抗性・感受性に関与している遺伝子候補の同定や転写因子の結合部位の予測を行った。 HSC-3では、8Gy照射後にopenになるピークの近傍に細胞内シグナル伝達に関わる遺伝子群が有意にみられた。PRKD1, STMN1, DCLK1, ADCY2, ADCY5を候補遺伝子とした。モチーフ解析では、転写因子としてRUNX2が濃縮されていた。qRT-PCRで発現変化を確認すると、HSC-3で8Gy照射後にSTMN1・ADCY2・RUNX2の発現が有意に増加していた。特にADCY2は、HSC-3では20倍程度の発現増加が認められ、KOSC-2でも4倍程度の発現増加が認められた。未照射の時点では、HSC-3とKOSC-2でADCY2の発現に有意な差がなかった。 Pathway解析では、 ADCY2-RUNX2へのシグナル経路が構築できた。ADCY2-RUNX2シグナルは、放射線感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された。 また、ChIP-Atlas解析結果では、HSC-3特異的に放射線処理でopenになるピークにHEK293でのRUNX1の結合部位が濃縮されていた。他の癌腫では、RUNX2はSEを形成している報告もあるために、ADCY2やRUNXが、SE形成の中心となっている可能性も示唆された。
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