研究課題
顎変形症は顎骨の大きさ、形態が著しく異常な状態であるものの総称であり、顎顔面骨の成長のアンバランスにより生じる。顎顔面骨は、内軟骨性骨化および膜性骨化が複合的に作用し成長することが知られているが、顎顔面の成長におけるそれぞれの働きは未だ明らかになっていない。本研究の目的は、顎顔面形態に対する内軟骨性骨化の影響を明らかにすることにより、顎変形症の発症原因を解明し、新たな顎変形症の診断法や治療法の確立に寄与することである。強力な内軟骨性骨化の促進因子であるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)を軟骨特異的に欠失させたCNPノックアウトマウス(Col2-CNP-KOマウス)と軟骨特異的に過剰発現させたCNPトランスジェニックマウス(Col2-CNP-Tgマウス)を作製し、顎顔面形態の解析と、病態解明をそれぞれ実施した。顎顔面形態の解析にて、コントロールマウスと比較し、Col2-CNP-KOマウスでは鼻骨、上顎骨を中心とした矢状方向への有意な劣成長を認めた。組織学的解析では、コントロールマウスと比較し、Col2-CNP-KOマウスのISSおよびSOSの厚みの減少を認め、内軟骨性骨化の抑制を認めた。Col2-CNP-KOマウスに認められた顎顔面骨の形態異常に対し、血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配によるレスキュー実験を行ったところ、CNPの血中濃度上昇により上顎の劣成長は有意に改善した。また、Col2-CNP-KOマウスより採取した軟骨細胞の三次元培養を行い、CNPの添加実験を行った。すると、Col2-CNP-KOマウス由来の軟骨細胞は内軟骨性骨化抑制を認めたが、CNP添加により軟骨細胞の肥大化および軟骨基質産生の増大を認めた。以上より、上顎の劣成長は内軟骨性骨化の抑制が一因となり得ることが示唆され、CNPが顎変形症の新規治療法となり得ることが示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
PloS one
巻: 17 ページ: e0277140
10.1371/journal.pone.0277140
Archives of oral biology
巻: 139 ページ: 105433
10.1016/j.archoralbio.2022.105433