研究課題/領域番号 |
19K19229
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 記世子 大阪大学, 歯学研究科, 特任研究員 (70827419)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 鼻咽腔閉鎖機能 / 口蓋裂 / 咽頭弁移植術 / 口蓋帆挙筋 |
研究実績の概要 |
鼻咽腔機能とは軟口蓋挙上および咽頭後壁・側壁の運動にて成り立つもので、構音時は気流の調節、嚥下時には食物の鼻への漏出を防止する運動である。鼻咽腔閉鎖不全になると構音・嚥下などに対して不利となる。術後に鼻咽腔閉鎖不全を生じる口腔外科的手術には口蓋形成術や口腔悪性腫瘍(上顎がん・上顎洞がん)切除術がある。従来より鼻咽腔閉鎖不全症に対する手術(咽頭弁移植術)が施行されてきたが、睡眠時無呼吸症候群の原因となることや非常に侵襲が大きいことなどの弱点を持つ。 そこで、今回我々は大きな侵襲の手術を使用せずに鼻咽腔を狭小化する方法を新たに開発するために、鼻咽腔閉鎖力に関しての生理学的研究を行うこととした。イヌの実験モデルを用いて、鼻咽腔に脂肪組織移植または生物由来製品の注入を行うことで開大した鼻咽腔の物理的狭小化をはかることが鼻咽腔閉鎖不全の解消を目指した新たな手術法となるという仮説を立て、それを検証することである。鼻咽腔閉鎖の研究では、動物を使った基礎研究をしている報告があまり見られない。これは、他の研究施設で行うには動物の鼻咽腔の解剖および鼻咽腔の生理的な機能に関して、周知されていないからではないかと考えられる。 一方で、我々の研究室では、現在に至るまで鼻咽腔閉鎖の研究・口蓋帆挙筋の性質に関する生理学的研究を実験動物としてイヌを用いて施行してきた。イヌは鼻咽腔閉鎖不全を有しており、鼻咽腔閉鎖不全の条件での研究ができることが明らかである。このように実験動物の鼻咽腔閉鎖のメカニズムを詳細に報告してきたわれわれの研究室において、鼻咽腔壁への注入を基礎実験で行う。鼻咽腔壁として、軟口蓋鼻側への注入が最も効率が良いという結果を得たため、現在は最良の注入物に関して検討することを目的とした実験を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍でテレワークとなることが多かったため当初の予定と比してやや遅れが生じていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
口蓋裂および口腔がん術後に生じる鼻咽腔閉鎖不全に関しては、長期間の言語訓練や口腔内装置装着、侵襲の高い治療である咽頭弁移植術といった身体的負担が大きい治療法のみが選択肢となっている。一方で、本研究で確立を図っている鼻咽腔壁への注入に関しては、根本的な鼻咽腔形態を変化させることなく、また睡眠時無呼吸を生じる可能性も低く、手術自体の侵襲も非常に低く、多数の患者のためにも、できるだけ負担の少ないより良い治療法の確立が待たれる。そこで、本研究において効率の良い鼻咽腔閉鎖法について実験していくこととしている。 現在までに軟口蓋鼻腔側へ注入を行うことが最も効率の良い方法であることが分かった。また、口蓋帆挙筋の再構築に関しては、重ね合わせる方法が最もよいということが分かっており、こちらに関しては論文化している。 令和3年度;いったん軟口蓋形成を行った後に 6か月経たモデルを用い、瘢痕形成または口蓋帆挙筋を再構築した状態の軟口蓋であっても閉鎖可能な条件(瘢痕に対する処理)について探索する。 令和4年度;瘢痕または口蓋帆挙筋を再構築した状態の軟口蓋に対して、鼻腔側へ脂肪やヒアルロン酸などのフィラーを注入することにより、最も効果のある条件はなにかを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画がコロナ禍のためにテレワークとなり、当初より遅れてしまっていることが原因で次年度使用額が生じたと考えている。 使用計画:今年は口蓋帆挙筋を再構築したイヌに対しての注入を行うことで鼻咽腔閉鎖運動を効率よく行わせる実験も計画している。以前口蓋帆挙筋の実験を肉眼で行っていたが、口蓋咽頭筋や帆張筋との鑑別が肉眼では難しく、拡大鏡が必要であると考えていた。今回、次年度使用額が生じたことで拡大鏡の購入にあて、口蓋帆挙筋の剖出および再構築を効率よく 、実施することが期待できる。
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