研究課題
癌幹細胞は癌の発生・進展のみならず再発,転移および治療抵抗性にも深く関与しており、種々の癌において癌幹細胞が報告されている。CD133 は癌幹細胞の有力なマーカーとして考えられており,さらに細胞接着分子インテグリンは,口腔癌細胞の増殖・浸潤機構の制御に密接に関与していると考えられている.本研究では,CD133陽性・陰性口腔癌細胞における細胞接着分子の翻訳後修飾を解析し,癌幹細胞に対する新たな診断・治療標的を探索することで,従来のがん治療にかわる新しい口腔癌の診断法や治療法を開発することを目的とする。 本年度は,ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株からCD133陽性・陰性細胞を分離した.無血清浮遊培養系でのsphere形成能を検討した結果、CD133陽性細胞はsphereを形成したが,CD133陰性細胞は形成できなかった.しかし培養開始時に,CD133陰性細胞にCD133陽性細胞を加えることでsphere形成能を獲得した.そこで口腔癌由来CD133陽性・陰性細胞における口腔癌の増殖・浸潤機構の制御に関与するインテグリンαvの翻訳後修飾について明らかにするため,まず口腔癌扁平上皮癌細胞におけるインテグリンαvの蛋白翻訳後修飾について検討した.インテグリンαv低発現口腔扁平上皮癌細胞をリソソーム阻害剤にて処理すると,インテグリンαvの発現増加を認めた。一方で,インテグリンαv高発現口腔扁平上皮癌細胞では,リソソーム阻害処理するもαv発現量の変化は認めなかった。これより一部の口腔扁平上皮癌細胞においてαvはオートファジー/リソソーム系による蛋白翻訳後修飾を受けている可能性が示唆された.
3: やや遅れている
CD133陽性・陰性細胞のオートファジーを誘導し, インテグリンαv発現変動を解析するために,オートファジーを制御する各種薬剤の投与時間,投与量,基礎培地等を見直す必要があると考えられる.CD133陽性細胞が全細胞中に0.5%しか存在せずハーベストする労力は多大である.in vivo研究における細胞の供給,選別に時間を要しており,今後手法の改善に取り組む必要がある.
今後は再度実験条件について検討し,無血清単層培養系および無血清浮遊培養系におけるCD133陽性・陰性細胞のインテグリンαv,p62などの発現や蛋白翻訳後修飾を解析する.オートファジーを制御する薬剤を用いてCD133陽性・陰性細胞を処理することで,各細胞のオートファジーを誘導し, インテグリンαv発現変動,増殖能やsphere形成能などを解析する.CD133陽性・陰性細胞をヌードマウス背部皮下に移植し,オートファジー誘導薬剤を投与し,腫瘍の造腫瘍能などを解析し比較検討する.
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日本口腔科学会雑誌
巻: 68(1) ページ: P12-19
巻: 68(1) ページ: P20-27