研究課題/領域番号 |
19K19239
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
畠中 柚衣 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (60815265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | lncRNA / 口腔扁平上皮癌 / interferon |
研究実績の概要 |
口腔がんの発生や進展に関与するlncRNAをスクリーニングし、新規口腔がん関連lncRNAとしてDLEU1 (deleted in lymphocytic leukemia 1)を同定した。これまでにDLEU1のノックダウンが口腔がん細胞の増殖、遊走・浸潤、in vivo腫瘍形成能を強く抑制することを見出し、さらにDLEU1とoncogenic signalを結ぶ分子機構を明らかにすることを目的として実験を行っている。 DLEU1による遺伝子発現制御機構を解明するため、DLEU1ノックダウンがOSCC細胞のエピゲノムに与える影響を次世代シーケンサーにより解析した。その結果、転写活性化マーカーであるヒストンH3リジン27アセチル化(H3K27ac)が、DLEU1ノックダウンによって低下することが明らかになった。H3K27acが変化する遺伝子群には、インターフェロンシグナル関連遺伝子が多く含まれることから、DLEU1ががん細胞のインターフェロンシグナルに何らかの関わりを持つことが示唆された。ChIP-seq解析において、DLEU1のノックダウンによって複数のインターフェロン関連遺伝子の転写開始点近傍における転写活性のactiveなヒストンマークの低下が確認でき、qRT-PCRでバリデーションを行った結果、それらの遺伝子の発現量の低下を認めた。レンチウイルスベクターを用いたDLEU1過剰発現系のマイクロアレイ解析において、前述のインターフェロン関連遺伝子の発現が上昇傾向にあり、qRT-PCRによってこれらの遺伝子発現量の上昇が明らかとなった。また、DLEU1過剰発現系を用いてH3K27acにおけるChIP-PCRを行うと、いくつかのインターフェロン関連遺伝子においてヒストンマークの上昇が認められた。 現在DLEU1とインターフェロンおよびインターフェロンシグナル経路との関連性についてさらなる機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたDLEU1の過剰発現系の構築は達成し、ChIP解析やマイクロアレイ解析などを実施しており計画通りに進行しているが、新型コロナウイルスの流行に伴い、研究実施困難な時期がありやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1.DLEU1標的遺伝子および相互作用タンパクのさらなる探索 RNA pulldownアッセイを行い、DLEU1と相互作用するタンパク質を探索する。BrUラベルしたDLEU1およびDLEU1のアンチセンスRNAをin vitro転写により生成し、口腔がん細胞株のライセートと混合してインキュベート、その後抗BrdU抗体によりRNAとタンパク複合体をプルダウンし質量分析によりタンパクを同定する。同定したタンパクが口腔がん細胞の増殖・遊 走・浸潤能に与える影響をノックダウン実験により検証する。 2.臨床的重要性の検討 TCGAやGene Expression Omnibusの公開データを用いて、DLEU1標的遺伝子および相互作用因子の臨床病理学的重要性を検証する。また札幌医大および関連施設にて外科切除された口腔がん組織検体を用いて、DLEU1標的遺伝子および相互作用因子の発現を定量RT-PCRや免疫組織染色により解析し、臨床病理学的意義を明らかにする。特にステージ分類・浸潤様式・薬剤耐性・放射線耐性・予後・再発などに着目し解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試薬や消耗品については、講座に前年度の残りがあり、今回新たに購入せずに実験を行うことが可能であったため次年度使用額が生じてしまった。 さらに、新型コロナウイルスの流行により参加予定であった学会に現地参加できなかったり開催が延期になったものもあり、予定より旅費・その他の出費が少なくなってしまった。繰り越した額については、2021年度に参加予定の学会費や論文投稿料等に使用する予定である。
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